コストを抑えつつも高品質なサービス開発で利益を追求する:Executiveインタビュー(3/3 ページ)
「楽天市場」をはじめとするeコマース事業で国内首位を走る楽天。先月末には会員数が5000万人を突破するなど勢いは止まらず、旧来型の小売・流通ビジネスにも大きな影響を与えている。好調を支えるサービス開発部門のトップに話を聞いた。
既存流通との対峙も
ITmedia 楽天に代表されるインターネットでの小売・流通ビジネスとは対象的に、GMS(総合スーパー)など旧来型の流通業は非常に利幅が薄くなってきており厳しい状況にあります。こうした既存流通とはどのような連携が考えられますか。
杉原 2つの方向性が考えられます。楽天市場に出店するなどわたしたちとともにビジネスをしている人たちに対しては、ITのノウハウを提供して彼ら自身が変わるきっかけをつくっています。もう1つは、同じフィールドである以上、連携することもあれば、競合として対峙することもあります。スーパーやコンビニエンスストアなど既存流通の企業も次々にインターネット展開しているため、切磋琢磨していくことになるでしょう。
インターネット販売における決済方法は電子化されており、既存の通販業界のやり方とは大きく変わってきています。物流に関しても、まさに全世界で必要なものを、必要なときに、必要な量を調達できる状況にあります。ユーザーが購入しようとするときに(「在庫あり」と表示されているが)実際には倉庫に在庫がなくても、出荷する最短のタイミングで商品がサプライチェーンに入ってきて、ほとんど遅延することなく検品、梱包されて配送されるということが起こりつつあります。毎日大量の注文が入っているのに倉庫はあまり大きくないという会社もあります。ITのなせる業でしょう。
既存の流通もそちらの方向に進んでいくはずだし、わたしたちもその主戦場に挑戦していきます。単にインターネットに店舗を構えて販売するというのは、もはや珍しくもありません。
社会に認められるような仕事を
ITmedia 今後、楽天がさらに急成長していくためにはどのような施策が必要ですか。
杉原 5年ほど前までは、とにかくやみくもに突っ走っていました。一刻も早くサービスをリリースしたいから属人的になり、高水準の技術者がどんどんサービスをつくり出していました。実力値以上のシステムを構築しようとすることもありました。現在は複数の人間がチームを組んでプロジェクトを動かす体制になり、仕様書やツールの統一化も進みました。システムについても、アーキテクチャを見直し、古いアプリケーションやソフトウェアからどう脱却するかをもがきながら考えて、ようやく基盤が整いつつあります。インターネット企業でここまできちんと考えているのは珍しいと言われますが、次の急成長に向けた準備として自然に実行しています。
楽天のやり方は管理が厳しいように見られがちですが、あくまで自分たちの状態を把握するための仕組みを構築しようとしたに過ぎません。結果として、このやり方で社員がより成長するし、変わっていけることが明確になったから継続しているのです。きちんとせざるを得ないように環境を整備することが重要です。
今後はわたしたちのサービスにおいての革新性を追求するのはもちろんのこと、日本のビジネスシーンにいい影響が与えられるように、社会還元していくべきだと思います。創業以来の理念や5つのコンセプトなどを中心に、規律を持って自分たち自身を成長させていく、社会に認めていただく礎をつくりたいです。
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