「プロジェクト成功の鍵を握る現場力」――三菱東京UFJ銀行・根本常務【後編】:経営革新の担い手たち(2/2 ページ)
ピーク時には6000名もの開発メンバーを動員して進められた、三菱東京UFJ銀行のシステム本格統合プロジェクト「Day2」。成功に導いたのは、同社で脈々と受け継がれてきた強い「現場力」だった。
プロジェクトは人を育てる
ITmedia 統合プロジェクトを振り返ってどのような感想をお持ちですか。
根本 計画通り完遂できたのは、高い使命感、強い責任感に裏付けられた社員、ビジネスパートナーの努力のおかげであり、全員がヒーロー、ヒロインであるとの思いが強いです。各人の着実な一歩の積み上げこそが、大きなことを成し遂げる原動力になったわけです。プロジェクトは人を育てるというように、大規模プロジェクトを通じて、システム部門、ユーザー部門ともに得たものは大きく、今後の財産になります。
これだけの大プロジェクトは、付け焼刃ではできません。長い間に育まれ培われた人材、良き組織文化が現役社員や先輩たちによって構築されてきたからこそ、いろいろな工夫や努力も生きたのだと思います。平時にしっかりとした仕事をし、将来を見据えた人材育成を怠らず、良き文化を創造、進化させることが真に大切であると改めて感じています。
景気低迷の今こそチャンスだ
ITmedia 統合により、世界に伍して戦うシステム面、組織面でのインフラが出来たと思います。一方で、ほかの企業を見ると、IT部門はさまざまな課題を抱えています。IT部門のあり方についてどのようにお考えですか。
根本 IT業界、IT企業で働く人々の大切さをもっと世の中に認知させることが大事だと思います。どの企業にとっても、ITは業務プロセスを改革したり、新たな経営への突破口を開くために重要なツールです。日本経済の競争力向上にもかかわります。ITの仕事は「3K」、あるいは「7K」などと揶揄(やゆ)される中、地道に実績を上げて、企業にとってITは生命線だと理解してもらうことが重要でしょう。
景気が低迷している今こそチャンスです。コスト構造改善、ビジネスモデルの変革に貢献できれば注目されるようになります。活機応変という通り、変化をとらえてチャンスと成す、IT部門が存在価値を示す重要な時期だと思います。ITと業務は切り離せないものですから、わたし自身の課題でもありますが、IT側から業務側にもっと働きかけ、社内を動かす努力をすべきです。
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