「情報」が第四の経営資源になる条件:Gartner Column(1/3 ページ)
前回のコラムでは情報を保有しているだけでは、競争優位は生み出せないということを解説しました。今回は情報活用を改善する姿勢とその能力を指す「情報指向」を説明します。「ヒト、モノ、カネ」に次ぐ経営資源として情報を活用しましょう。
前回は「価値ある情報は競争優位を生み出すのか」というテーマを取り上げ、情報を保有しているだけでは競争優位を生み出すのは難しいことを説明しました。
情報を経営資源として使うには、情報活用の方法を継続的に改善しようとする姿勢とその能力を指す「情報指向(Information Orientation)」が不可欠になります。今回はこの情報指向を解説します。経営にうまく活用できる情報は、「ヒト、モノ、カネ」に次ぐ第四の経営資源になります。
図1は情報指向を形成する3つの要素を示した「情報指向モデル」です。「ITプラクティス」、「情報管理プラクティス」、「情報活用に関連した行動および価値観」で構成されています。
ITプラクティス
ITプラクティスは、技術やツールを使って経営や競争優位性を管理する施策です。図2は、ITプラクティスが具体的にどのようなものかを示しています。以下、構成要素を説明します。
「企業経営に対するIT支援」は、多くの場合、社内外の情報源を監視・解析することで、経営幹部の意思決定を支援する技術や要因です。BI(ビジネスインテリジェンス)などのツールが代表例です。
「イノベーションに対するIT支援」 は、新しいアイデアや製品など、創造を目指す集団活動を支援するグループウェアなどのツールを含みます。
「ビジネス・プロセスに対するIT支援」は、社内の業務プロセスおよび社外のサプライヤー(製品やサービスを提供する取引業者)や顧客に関連する業務プロセス管理のシステムや仕組みを含みます。具体的にはERP(企業資源計画)やSCM(サプライチェーンマネジメント)などです。
「業務運営を対するIT支援」は、電子メールのようなIT基盤への投資を指します。
ITプラクティスが持つ競争上の価値は、下位レベル(業務運営に対するIT支援)の実行能力から上位レベル(企業経営に対するIT支援)での洞察力/先見性、そして特権的関係にかかわるものに変化しています。重要なのは、下位レベルの支えがあってはじめて上位レベルの施策が実現することです。
情報管理プラクティス
情報管理プラクティスは、スキルの高い人材が複雑な作業をできるだけ迅速かつ効果的に実行できるように支援する活動です。情報を管理するプロセスを指し、テクノロジー(技術)ではありません。その目的は、重要な業務プロセスに関与している人が、できるだけ迅速かつ効果的に意思決定を行い、実行に移すための情報を確実に得られるようにすることです。その情報は、構造化され事実に基づいたものと、文章のように構造化されていないものを含みます。
情報管理プラクティスは重要な情報を識別して選び出す「検出」に始まり、以下の手順を踏むことで実現します(図3)。
「収集」:情報を集めて、保存および管理が可能な形に変換する
「編成」:情報の目録を作成して、容易に検索できるようにする
「処理」:情報を業務プロセスまたは役割に応じて体系的に当てはめる
「維持管理」:情報を管理して、使える状態が持続していることを保証する
このプロセスは連続しており、各ステップは先行するステップに依存します。ステップごとに「何が、なぜ、どのように重要か」を決定する必要があります。これらを決めるのはその問題の専門家です。成功する情報管理プラクティスの多くは、IT部門ではなく事業部門にその基盤を置いています。
情報管理プラクティスを成功させるには、熟練した要員が、作業を効率化するのに必要な特定の情報に対象を絞ることが鍵となります。誰もが知っている情報を集め、分類することではありません。プロセスまたは役割に固有の形を取ることが、情報管理プラクティスを成功に導くコツなのです。
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