「情報」が第四の経営資源になる条件:Gartner Column(2/3 ページ)
前回のコラムでは情報を保有しているだけでは、競争優位は生み出せないということを解説しました。今回は情報活用を改善する姿勢とその能力を指す「情報指向」を説明します。「ヒト、モノ、カネ」に次ぐ経営資源として情報を活用しましょう。
情報活用に関連した行動および価値観
『Information Orientation: The Link to Business Performance』の共著者であるドナルド・マーチャンド氏は、情報の価値と行動――企業が情報に対してどう取り組むか、企業内の個人レベルおよび全社レベルで情報をどう活用するか――が、競争優位性の確立に最も大きな影響を与えると述べています。図4は、情報指向が持つ価値と行動の構成要素です。
「一貫性」:情報の信頼性と、企業としてのニーズに対応する一貫した活用方法を指す。一貫性が低い場合、個人が自分の目的に合うように情報を操作する恐れがある
「正規性」:個人的または非公式の情報源ではなく、正式で「承認された」情報源に企業がどの程度依存しているか
「統制性」:ビジネスパフォーマンスに関する情報が、どの程度従業員に公開され、決定や行動に活用されているか
「透明性」:従業員が成功や失敗についてどの程度オープンかつ建設的に議論できるか
「共有」:企業内、サプライヤーや顧客企業を含む企業外との自由な情報交換
「積極性」:企業の環境変化や、新しい機会と脅威に関する最新情報を、従業員がどの程度探し求めて活用しているか
優れた情報の価値とそれに基づく行動が情報指向の実現に不可欠なら、倫理に反した行動を取る企業は、情報を競争の武器として活用するのは難しいのでしょうか。直感的に言えば、答えは「イエス」です。経営者や組織全体が、必要な情報を改ざん、隠ぺいをしている場合、この情報を使って事業に関する効果的な決定を下せるでしょうか。
経営者が適切な行動を取らなければ、従業員も適切に行動できません。例えばエンロン事件では、経営者が真実をゆがめていました。
経営者の堕落は、現場が生み出す価値を内側から崩壊させ、士気、透明性、共有、一貫性を壊してしまいます。これにより、企業の情報指向の完成度が低下するのです。極端な場合、企業のリーダーが重要な情報の価値とそれによる行動を無視すれば、企業は市場から強制退去させられてしまいます。適切な情報の価値とそれに基づく行動に忠実であれば、大きな価値を創造し、ビジネスに変化を与えることができます。
そこで必要となるのが経営者の監督です。正しい評価と報酬を与えられるシステムを持つようにして、従業員に期待することは何かを知り、それに対して評価や報酬を与えるべきです。評価と報酬は、企業が情報を競争のための武器として使用する上で適切な価値と行動に一致していなければいけません。
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