“引くも地獄、引かぬも地獄”――保護主義が強まる西欧諸国:フランスに行ってみますか?(1/2 ページ)
「バイアメリカ条項」を掲げた米国に対し、保護主義だと批判する声は多い。実は保護主義への傾斜は西欧諸国でも見られる。西欧が東欧を助けながら経済発展を遂げてきたEUが今、危機的状況に立たされている。そのとき、サルコジは……?
遠くフランスにいると、日本が今どういう状況なのかよく分からない。ネットなどを通して情報を手に入れているが、どうも実感がわかない。日本の知人と連絡を取り合うと、「日本は本当にどうしようもないから」とか、「今の日本は大不況で」とか、「ヨーロッパの方がいいだろうから」とか、そんな話ばかりが耳に入ってくる。そのたびに「東欧という爆弾を抱えているヨーロッパの方がひどいよ」と言い返したくなってしまう。
いずれにせよ、日本のマスメディアが悲観論に走るのはよくあることだが、日本だけが沈んでしまうというような「日本沈没論」のたぐいをセンセーショナルに伝えることに終始してひたすら不安をあおるのは、知的な意味でまったく誠実ではあるまい。そもそもこの不況は「世界同時不況」なのだから。
保護主義に走るのは米国だけではない
このたび米国下院では、景気対策法案に基づき資金を受ける公共事業で使用される鉄と鉄鋼を必ず米国内でまかなうことを義務付ける「バイアメリカ条項」が承認された。これまで「自由主義経済」を先導してきた米国が、一転「保護主義」に走り始めたことに対し、日欧をはじめとする多くの国々から強い批判が向けられた。
世界史的に見れば、このような世界規模の経済危機に際して保護主義が台頭するというのは、1929年の世界恐慌時に各国がブロック経済に走ったことが有名だ。このとき顕在化した「持てる国」と「持たざる国」の対立は、第二次世界大戦という不幸な結末を招いてしまう。もちろん当時と今の時代では状況が似て非なるものなので、何らかの教訓を学ぶにしても、安易に比較しつつ悲観論に走るべきではないだろう。
とはいえ、現在のヨーロッパでも保護主義が台頭してきているのは事実だ。例えば2月9日、フランス政府は国内の工場やそこで働く従業員の雇用を維持することを条件に、今後5年間で総額78億ユーロ(約9000億円)の公的融資をRenaultやPeugeotといった国内自動車産業に実施すると発表した。この経済対策についてサルコジ大統領は「(フランスの雇用を守るためにも)チェコで車を作ってフランスで売るのは認められない」などと発言し、フランス企業の工場を誘致してきたチェコ政府から強い反発を受けた。欧州委員会もフランスをはじめとしてスペインなどにも広がりつつある保護主義への傾斜を警戒している。
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