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トヨタの「自前主義」に微妙な変化――情シスを統括する大西常務ロングインタビュー(3/5 ページ)

情報システムを開発し、所有する「自前主義」を貫いてきた同社だが、深刻化する不況の中で、それも微妙に変化している。トヨタで情報システムを統括する大西弘致常務役員に話を聞いた。

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CAEの利用が増える

 ただし、サーバ集約にしろ、ソフトウェアの更新にせよ、一時的に激しいリストラ投資が必要になります。旧サーバを集約するためには、ブレードサーバなどの新たなハードウェアの購入費用、新たなネットワーク環境といった新規投資が不可欠だからです。中期的にはコストは削減できるかもしれませんが、一時費用は大きくなります。それがいま、会社の中では手をつけにくい状況です。

 また周辺の話としてインフラ構築の際は、電気代、大きさ、質量の3つをみますが、必ずしもその3つはリニアに効果が出る関係にはありません。現在は、サーバ性能などが上がり、サイズは小さくなっても、電気代が全然下がらないといった状況などが一例です。かえって、面積当たりの発熱は高まってしまうこともあります。

ITmedia アプリケーションで新しい動きはありますか。

大西 代表例はCAE(Computer Aided Engineering)のところです。技術開発として2つあります。人手を省きたいということで、コンピュータによるシミュレーションをしたいということ、もう1つは自動車製造においてシミュレーションをせざるを得ない新技術が出てきていることです。例えば、FC(燃料電池)技術のように「まだ仮説しかない」という状況では、試作品をつくらずに机上である程度のところまで、仮説の検証をしなくてはなりません。それは、CAEの得意とするところです。

 CAEの使用規模はどんどん大きくなっています。ここのところの電気代の増分のうち、半分はCAEによるものと考えて間違いありません。今日本で使われる電気代の5%がIT関係といわれています。それが2020年代には20%になるといわれているのです。だから、ベンダーがグリーンITへの取り組みをアピールするのも、分からなくはありません。

ITmedia 人手の省力化という意味で、CAEはどのくらい効果がありますか。

大西 分野によります。衝突実験のボディ強度の計測、F1の空気抵抗の計算、ハイブリッドの制御のパターンも、CAEでサポートできます。いろいろありますので、一言では言えません。

ITmedia トヨタ自動車の情報システムというと、メインフレームを使いこなしている印象があります。メインフレームへの考え方について改めて教えてください。

大西 生産系については、トヨタウェイ、グローバルトヨタプロダクトというものが現存します。進化するとしても世界で統一した形で進みます。ボディーメーカーやサプライヤーなどがみんな関わっていますので、その垂直統合の部分については今後も残っていくと思います。

 ただし、かつてはそれがトヨタ自動車の企業価値とイコールでしたが、今後どう続けられるか。生産性や品質などのトヨタの優位性をしっかり守る一方で、新しい働き方を創出する必要があります。そうしないとレガシーなビジネスモデルを維持するだけになってしまいます。

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