理想のタスクリーダーはすべてを「決めない」「抱えない」:タスクチームのススメ(6)(3/3 ページ)
タスクチームを成功に導くリーダーは、活発な議論を通じてタスクチームが目標に向かって活動できるようにリードすること、そしてチームを支える裏方に徹する必要がある。最終回となる本連載では、タスクリーダーと事務局に求められる心得を紹介する。
6-6 意見の対立をどう考えるか
意見の対立は、本来は素晴らしいことだ。異なる意見があるからこそ議論が活発になり、自分一人では到底考えもつかないようなアイデアが生まれる。耳が痛い意見でも、傾聴すべき内容を吟味して、積極的に取り入れる姿勢を持つべきだ。
意見の対立を乗りこえて建設的な議論をするためには、個人や人格ではなく起こっている現象に対して意見を述べることが必要だ。誰もが認める客観的事実に基づいて、感情を交えず意見を言うことも心掛けたい。
例えば「心情的に賛成できない」ではなく、「こうした理由から、あなたの意見には賛成できない」という言い方をするべきである。このような議論の場を作るために、原因を分析する論理的思考を考えておきたい。
議論の場では、常に否定的な態度で意見を言う人もいる。活発な意見交換の結果、非現実的な結論になりそうな場合、冷静な意見は貴重だ。しかし、「冷静」と「否定」はまったく異なる。前者はタスクチームの進む方向を軌道修正し、後者はチームの活気を奪う。タスクチームにこうしたメンバーがいる場合は、メンバーの見直しも必要になる。
6-7 「貴重な人生の時間を預けてくれている」という意識を持つ
タスクメンバーは、それぞれの組織で重要な役割を担っている。誰もが多忙で、貴重な時間をタスクチームに提供している。多くの場合、上から言われてただタスクチームに参加しているのではなく、タスクチームに何かしらの意味や意義を見いだし、使命感を感じて参加している。
「タスクメンバーはそれぞれの思いを持って、貴重な人生の時間を預けてくれている」
リーダーや事務局は、この意識を常に持ち、メンバーから預かったかけがえのない大切な時間を有効に使うように心掛けたい。
6-8 タスクチームの意義
個人や部門で一生懸命頑張っても、会社や事業全体で結果がでない……。この場合、原因の多くは個人同士や部門同士の間に潜んでいる。この「間」の問題は、単独の部門では解決できない。
本連載の冒頭では、組織間の壁を取り払って風通しをよくし、組織全体で成果を生み出す仕組みに変革することが重要だと述べた。タスクチームは、こうした変革を実現する方法論の1つである。
世の中の変化が速くなり、グローバルで競争が激化している現代。企業は部門単位での競争から、全体最適を通じた競争力を強化する方向にシフトしていかなければならない。こうした中、タスクチームの役割は重要さを増している。組織が抱える問題を解決し、企業全体で成果を上げるためには、タスクチームを正しく運営することが不可欠だ。そしてその方法論は、企業だけでなくあらゆる組織でも有効である。
本連載がその一助になれば幸いである。
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(注)本書に掲載された内容は永井孝尚個人の見解であり、必ずしも勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。
著者プロフィール:永井孝尚(ながいたかひさ)
日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部にて、マーケティングマネジャーとして、ソフトウェア事業戦略を担当。グローバル企業の中で、グローバル統合の強みを生かしつつ、いかに日本に根ざしたマーケティング戦略を立てて実践するのか、格闘する日々を送っている。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「永井孝尚のMM21」で、企業におけるマーケティング、ビジネススキル、グローバルコミュニケーション、及び個人のライフワークについて執筆中。著書に「戦略プロフェッショナルの心得」がある。
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