メガバンクのIT投資、09年度は最大20%減:IDC Japan調べ
2009年度のメガバンクのIT投資予算は、前年に比べて10〜20%落ち込む見通しだ。金融危機に端を発した業績不振から、大型の新規プロジェクトを先送りする動きが目立った。
2009年度における大手金融機関のIT投資予算は前年度から最大20%落ち込む見通しであることが、調査会社IDC Japanの発表で明らかになった。
同社によると、メガバンクなどの金融機関における2009年度のIT投資予算は、前年度に比べて10〜20%減少する。金融危機の影響でメガバンクの業績が急速に悪化したため、予定していた大型新規開発プロジェクトが先送りになったことが原因。2007〜2008年に着手した大型プロジェクトの多くが完了したことも影響している。
一方で、地方銀行、信用金庫、信用組合の一部では勘定系システムの刷新やシステムの共同化などの案件が進む。保険金の不払い問題が起きたことで、保険会社が基幹系システムなどを刷新する動きも出ており、大手以外の金融機関のIT投資は堅調に継続する。
2009年度の投資項目を見ると、「次世代勘定系システム」(23.1%)、「顧客管理システム」(16.9%)、「インフラ統合」(16.3%)の回答率が高かった。顧客管理システムおよびインフラ統合を進める動きは、多くの金融機関が顧客の囲い込みとシステムの効率改善を図っているため。
大手を中心にIT投資が大幅に抑制される中、大手以外では経営戦略にひも付いた分野での投資が陰りを見せない。IDC JapanでITスペンディング マーケットアナリストを務める市村仁氏は「ITベンダーは上流工程から参画し、金融機関が抱える経営課題を詳細に把握する必要がある」と発表文内でコメントしている。
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