定時に一斉消灯、省エネと就業意識の変革を狙うNEC:わが社のコスト削減
経済危機の直撃によって一層のコスト削減を迫られている日本の製造業。NECは「ちりも積もれば」を合言葉に日常的な節約にも余念がない。
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昨年秋以降の世界的な景気低迷は、半年が経過した今なお先行きが不透明のままだ。日本では、2008年3月期の決算発表によって企業の資金繰りの悪化が懸念された「5月危機」を乗り切ったものの、経済危機の震源地である米国では、自動車大手のChryslerに続きGeneral Motors(GM)も破産法申請し、この余波が日本の自動車メーカー、部品メーカーに新たな脅威をもたらせている。
こうした状況の下、企業にとってコスト削減は待ったなしの命題といえる。人員削減や工場閉鎖といった大規模なてこ入れを行う一方で、小さな節約をこつこつと積み上げる取り組みも軽視できない。
単独で2万3000人、連結334社で15万人を超える従業員を抱える日本電気(NEC)は、日本でも有数の大規模企業である。同社では、このたびの経済不況を受け、オフィスビルなどの建物設備に関する経費削減に一層注力している。
一斉消灯で年間3600万円のコスト削減
その1つが照明、空調設備の電力量削減だ。具体的には、同社の定時退社日に照明を一斉消灯するほか、空調設備の運転時間を短縮する。「これまでも定時退社日の一斉消灯は実施していたが、今年2月より従来の20時30分から18時に時間を前倒しし、消灯ならびに空調の運転を停止するようにした」と総務部 不動産管理部長の池亀直人氏は説明する。
実際にどれほどの削減効果があるのか。京浜地区ビル(本社、玉川ルネッサンスシティ、大東田町ビル、DSKビル、芝ダイビル)および我孫子、府中、相模原の3事業所を対象に測定したところ、合計で電力料金が1日当たり36万円削減、都市ガス料金が同14万円削減となり、光熱費全体で50万円のコストダウンを実現できた。これは一般家庭約900軒分の光熱費(1日当たり)に相当する。定時退社日は、毎週水曜日や給与支給日などで月6、7日間設けているため、月に約300万円、年間で約3600万円の削減が可能になる。
「具体的な数字を示すことで社員にもコスト意識を持ってもらうことができる。一人一人が徹底することでさらなる削減効果が期待される」(池亀氏)
一斉消灯はNECの全拠点で実施されており、今後は順次グループ会社にも呼び掛けていく。
働き方にも変革を
もっとも、同社の狙いはコスト削減だけではない。社員の働き方に対する意識改革も併せて行っていく。昨今日本では「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」が叫ばれており、NECでも全社員の9割を対象とした在宅勤務の推進や健康管理に関するキャリア研修など、さまざまな施策を打ち出している。空調の制御や一斉消灯によって、すぐに定時退社を徹底できるわけではないが、「現在の経済環境や職場状況を考慮しながら、徐々に就業意識が変わっていくのでは」と池亀氏は話す。
「建物設備に対するコスト管理は、目を引くような効果が出るものではない。しかし、着実に積み重ねていくことが肝心で、社員一人一人が省エネやコスト削減、ひいては効率的な働き方を考える契機になれば幸いだ」(池亀氏)
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