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【第4話】期待と戸惑いの始動内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)

ある日突然、急に勉強会に参加するよう呼び出された若手社員の宮下と奥山。これからどんなことをやっていくのかについて多くを語らない川口。3人だけの勉強会がいよいよ始まった。

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内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ



 7月の最初の火曜日、その日は川口が勉強会の初回を開催すると秦野部長と約束した日だった。

 午後6時ちょうどに川口が会議室に入ると、宮下卓と奥山由希子はすでに席について待ち構えていた。2人は秦野から川口が企画する勉強会に参加するよう指示されたときから、この日を心待ちにしていた。宮下は32歳、奥山は29歳。共に新卒であかり食品に入社して以来、初めから情報システム部に配属されているものの、入社直後の社内研修を除けば、研修というものをほとんど受けたことがなかったからだ。

 何度か外部研修に参加したことはあったが、あくまでも業務で必要な技術を習得するためのものに過ぎず、自らのビジネスパーソンとしてのスキル向上意欲を満足させるものではなかった。裏を返せば、それほどまでに情報システム部のスタッフには時間的余裕がなかった。ここ数年で新人が配属されるようになったが、それまで2人は長らく情報システム部の最若手として日々の業務に追われていた。

“何を考えるか”を考える

「川口さん、よろしくお願いします!」

 開口一番、宮下は目を輝かせてこう言った。奥山も期待に胸を膨らませた表情で「どんなことを教えてくださるのですか?」と尋ねた。

「おいおい、そう慌てるなよ」。2人の勢いに押された川口は苦笑しながら席につき、一瞬間をおいて口を開いた。

「これから毎週火曜日のこの時間、勉強会を開催します。会社の大切な経営資源であるきみたちの就労時間を預かるからには、リターンを生み出して会社に貢献しなくてはならないと思っています。きみたちもそのつもりで参加してください」

 川口の真剣な面持ちに2人の顔はこわばった。

「まあ、固い話はこれぐらいにして、早速これからどんなことをやっていくか考えよう」

「固い話はそれぐらいにして」という言葉で二人の表情は少し和らいだものの、「何をやっていくのか説明しよう」ではなく「何をやっていくか考えよう」という川口の語尾に、困惑した様子だった。気にせず川口は続けた。

「ぼくのことはインストラクターではなく、ファシリテーターだと思って欲しい。何かを教えるというよりは、2人が考える手助けをする役割だ。もちろん、問題解決のための手法や論理的な思考のための基本パターンなど、考える上で役立つ方法は必要に応じて説明する。しかし、考えや結論を導き出すのはきみたち自身だ」

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