派遣・請負切りはドンドンやれ!:生き残れない経営(1/2 ページ)
派遣社員や請負社員への依存体質を抜本的に見直すべきだと気付いた企業こそが未来を先取りできる。今こそ経営改革のチャンスなのだ。
派遣・請負社員切りは、企業にとって経営改革の絶好のチャンスである。かねてから筆者は、派遣・請負などの非正規社員採用は人件費の節約になり企業の業績にプラスになると思っていたら大間違いだと、機会あるごとに指摘してきた。それは企業現場の実態を見れば見るほど、ひしひしと実感させられることである。
非正規社員への依存体質を抜本的に見直すべきだと気付いた企業が未来を先取りできる。経済状況が劣悪の中で派遣や請負を切らなければならない今こそがチャンスなのだ。
請負社員と派遣社員
製造現場の実態が、そのことを雄弁に物語っている。某大手企業A事業所の製造現場で見られる光景は、すでに世の中の常識になっている。製造現場のあちこちで、異なる作業服を着るグループが作業し、その現場には「○○サービス」「××製作所」という外注の社名看板が掛かっている。いわゆる請負制だ。A事業所には、請負作業者を管理する権限がない。請負先の責任者を通して指示することになる。隔靴掻痒(そうよう)である。
長髪もいれば茶髪もいる。作業服をだらしなく着る者もいる。音楽を聴いているのか、イヤホーンを耳につけて作業をしている者もいる。ブラジル人ばかりのグループもある。工場内にあるすべての掲示には、日本語のほかに複数の外国語が併記されている。異様な感じだ。外国人たちは、ある日突然出勤せずに消えてしまうケースが少なくない。彼らの間で情報交換をして、雇用条件の良い方へ簡単に転職していくのだ。請負社員の多くはまじめに仕事に取り組んでいるはずだろうが、目に飛び込んできた第一印象はこうである。
一方、派遣の場合は、正規社員の中に入り込んで仕事をしているので判別しにくい。まして、正規社員と同じ作業着の場合はまるで区別がつかない。
中堅企業B社の例を紹介しよう。B社では同じ職場で仕事をしていながら、派遣と正規には歴然とした処遇差、何より給与の差がある。会社、組合からの通達や特典は、非正規社員には無縁だ。休憩時間も派遣と正規は別々に群れる。潜在的に、派遣社員には最初から敗北感や諦め、自虐観がある。請負社員も同じだ。一方、正規社員には最初から優越感や差別感がある。当然、仕事に対する意識の差が生まれる。
A事業所のある部署の製造現場で働く者は、指導員数人と主要ラインの作業員数十人が正規社員で、8割以上が非正規社員である。これほど多く賃金の安い非正規社員に依存していれば人件費の節約にはなろう。しかし麻薬みたいなもので、小人数で始めた非正規社員の利用が、やがて大多数を占めることになり、ついには後戻りできなくなる。
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