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【第2回】顧客から十人十色の「個客」の時代へ21世紀市場を勝ち抜くIT経営(2/3 ページ)

20世紀の大量生産、大量消費の時代は幕を閉じ、21世紀は市場の細分化により消費者一人一人に焦点を当てたマーケティングが求められるようになった。今こそ独自性や付加価値を強みにした経営戦略を打ち出すべきだ。

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21世紀は供給過剰の買い手市場

 20世紀は大量生産・大量消費に代表される成長市場であった。コストリーダーシップを獲得することが重要であり、このために企業規模を拡大することが重要とされた。だが21世紀は、大きく異なる。市場は成長しない、需要は増えない、新規市場が生まれても供給能力が高いためにすぐに飽和する、というような市場特性を持つ。平たく言えば、20世紀は「売り手市場」だったが、21世紀は供給過剰の「買い手市場」である、ということだ。

 実は、このことがものすごく大きな経営の転換を必要としているのだが、多くの企業はそのことには気が付いていない。売り手市場とは、端的に言えば「皆が同じものを利用する市場で、市場は限りなく大きく一つ」のようにとらえることができる。マスマーケティングが通用する世界である。

 一方、買い手市場は、真逆である。「一社一社、一人一人ニーズが違う、欲しいものが違う」という世界である。例えば、日本に450万の企業があれば、その数だけの違った小さな法人市場が存在する。同様に1億3000万個の小さな個人市場も存在する、と仮定する。こうした市場に対しては、20世紀のコストリーダーシップによる「安かろう」で勝ち抜く戦略は使えない。小さな市場に薄利のビジネス戦略で攻めては採算が取れないからである。適切な利益が確保できる付加価値向上型のビジネスモデルに転換していかなければならない。

 皆違う市場であるから、具体的に、どの市場を攻めるのか、の見極めが重要となりマーケットセグメンテーションの考え方を採用しなければならない。ターゲットの選定、市場の細分化、ワン・トウ・ワンマーケティングなどが求められる。さらに商品やサービスの付加価値を顧客に認めてもらうには、顧客のきめ細かな要求に対応することも必要不可欠となり、マーケットセグメンテーションだけでは不十分で、商品やサービスをカスタマイズしたりパーソナライズしたりすることなどが求められる。

 21世紀の顧客は、皆異なるという意味から「顧客」ではなく「個客」という文字で認識することが大切である。しかし、今日は非成長市場であり「新規個客」は20世紀のように簡単には増えない。事業を継続させていくには、獲得した顧客を継続顧客とする「リピートオーダー戦略」が重要となる。自社にとってリピートオーダーにつながる「良い個客」とはどの会社か、誰か、をよく考え「永いお付き合い」を可能にするビジネスモデル、マネジメントモデル革新を行い、それをIT活用で実行していく。

 問題なのは、相手側、「個客」が提供側の付加価値を受け入れてくれるかどうかだ。そのためには、顧客に選ばれるという受け身の姿勢では駄目である。積極的に攻略する相手を自分で決めて、自社が持つ「こだわり」「独自性」「強み」「付加価値を作り出す仕組み」を、情報発信戦略を駆使して市場や顧客に十分にアピールしていくことが必要である。

 こうした戦略を徹底化していくと、100社あればターゲットが異なる100通りの戦略が生まれることになる。そうなれば、厳しい市場でお互いが無益な競争をするのではなく、市場ですみ分けることができる。これは中小企業にとっては、大歓迎すべきことである。

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