【第8話】課題を洗い出す:内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)
いよいよ検討テーマに対する課題の洗い出しが始まる。カードBS法と呼ばれる手法を活用し「なぜ、ITが十分に事業に貢献できていないのか」の原因を導き出す。
なぜ? を繰り返し問い掛ける
「これがカードBS法だ。何か不明な点はあるかな」との問い掛けに、「『なぜ、ITが十分に事業に貢献できていないのか』の理由をとにかくたくさん書いていけばいいのですね」と宮下が質問した。
「そうだ。今回は少々細かいことでも構わない。思いつくことを書いていけばいい。それから、テーマ出しの時も言ったように、人、制度、プロセスなどさまざまな領域に考えを巡らせてみるとよい。1つの“なぜ”を思いついたら、さらにそれがなぜ起こっているのかを繰り返し考えてみてもいい。では、早速やってみよう」
川口は、用意していた時計のタイマーを5分にセットし、スタートボタンを押した。3人は一斉に付箋紙に課題を書き出していった。沈黙の中で、3人が走らせるサインペンの音だけが響き、しばらくして静寂を破るようにタイマーがピピピッと鳴った。「もう5分か。早いな」。宮下がつぶやいた。
川口は、机の中央に模造紙を広げながら「奥山さんから1枚カードを読みながら、ここに貼り付けていってくれ」と指示した。1枚ずつ順番に読み上げながら時計回りに発表し合い、4周目で奥山が、5周目で宮下がパスをして第1クールが終了した。
「では、再び5分間の発想タイムだ」と川口はタイマーのスタートボタンを押した。
3クール終わったところで、模造紙には40枚ほどの付箋紙が貼り付けられていたが、クールを重ねるにつれ明らかに出てくるアイデアの数が減ってきていた。
「そろそろネタ切れになってきたかな。では、少し休憩して、その後にもう1クールやることにしよう。ブレインストーミングの時と同じようにカードBS法も“最後のひと絞り”が大切なのだよ」
3人はコーヒーを飲みながらしばし雑談し、 最後のひと絞りに取り掛かった。
著者プロフィール
内山悟志(うちやま さとし)
株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。
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