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ゴルフダイジェスト・オンライン 大日健COO【対談連載】石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/3 ページ)

ヨーゼフ・シュンペーターが提唱する「企業家による不断のイノベーション」を挙げるまでもなく、経済発展のためには企業の永続的なビジネスイノベーションが不可欠である。本連載では、ネットイヤーグループの石黒不二代CEOが先進企業のビジネスリーダー、有識者などからビジネス革新の勘所を引き出す。

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Final Destinationの優位性

 大日さんのコメントで面白いと思ったのは、GDOのパートナー企業のことです。ゴルフ場やゴルフ用品ショップの中には、GDOに対していろいろな思いがあるというのです。本来、ゴルフ場は一年中コースの稼働が100%正価で埋まり、ゴルフメーカーは生産したすべての製品が正価で完売することが最も好ましいのですが、そんなユーザーを知り尽くしたマーケティングができる企業は存在しません。まさにここにGDOの価値があるわけです。

 例えば、ゴルフ場には季節要因があり、売れる時期と売れない時期があります。売れる時期はゴルフ場単独の営業で製品(コース)は掃けますが、売れない時期にこそGDOの助けが必要となります。売れない時期だから必然的に単価は安くなりますが、ゴルフ場単独では売り上げがゼロになるかもしれません。これはECにも当てはまります。ユーザーはいろいろなサイトで検索した後、GDOで価格比較し購買します。つまり、GDOはどちらの場合も「Final Destination」なのです。

 仮に1660ものコースを抱えていれば、季節要因を容易に把握できます。タイムラインが分かっているから、売り上げが下がるところで強みを発揮できるのです。会員を抱えているので商品のタイムセールも可能です。ユーザーの行動や動機をより把握できるので、マーケティングを実施するには最高のポジションにいて、サプライヤーにもこの情報は有益であるはずです。この意味では、今まで単独でユーザーの行動を把握しようとしてきたゴルフ場やショップは、相対的に見ればマーケティングができていなかったといえるでしょう。

マーケティングの指標はPL・顧客満足度

 大日さんによると、GDOでは小売業に詳しい人とネットビジネスを知る人の両方がいることで力を発揮しているのだそうです。これは比較的ポジティブな見方で、他企業でよく聞くクレームは、小売しか知らない、ネットしかできないというものです。こんな発言をする経営者の下では、双方の知識が融合する気がしません。この知識をつなげようとする意思の下で、GDOでは、ネットイヤーグループが提唱しているような「Webセントリックマーケティング」、マーケティングのあらゆる側面で投資対効果を測定できるような仕組みづくりがすでに定着しつつあります。例えば、ネットを知る人の「キャンペーンマネジメント」が、小売を知る人の「管理会計」により、その効果が把握できるようになっているのです。

 GDOのマーケティングでは、事業活動を計るためのKPIをPLレベルから末端のマーケティング指標(ビジター数)まで指標連携させる取り組みに着手しており、これは組織目標指標から個人目標指標までが連携している状態を表します。今後は、会員系指標PL指標との連携までを行おうとしています。

 アクティブ顧客や会員の率、顧客獲得コストなどが指標に入っているのは当たり前で、面白い指標としては、推薦者の正味比率というものがあります。正味比率の定義は、製品やサービスを友人や同僚に是非紹介したいという人の比率から誹謗者(紹介したくない人)の比率を引いたものです。いわゆる顧客満足度調査といっていいと思いますが、毎年2回実施する調査で、平均で約1万3000人からこの正味比率を抽出しています。

 顧客満足度調査というのは非常に重要な指標です。なぜなら、PLはその年の活動の結果に過ぎないのですが、顧客満足度は、この結果が恐らく数年後のPLの数字として現れるものだからです。GDOがこの正味比率を計測しているのも、紹介された人がどう動くかという傾向、物販でいうと共有のような役割を果たす人たちの傾向を知ることで、将来業績を推し量り、マーケティング対策を打つことを目的としているからです。

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