民主党、300議席の罠:藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)
たとえ勝ったからといって楽観している余裕はない。閉塞状況にある政治を打開するには口先だけでは2年ともたないだろう。
うそを繰り返すな
だから民主党にとっての問題は、日本の閉塞状況を把握し、それをどう打開していくのかという道筋をつけることなのである。その過程では、国民に対して苦しい選択を迫ることもあるだろうが、それをしてこそ一人前の政党である。だいたい消費税というか増税論議をしないという公約ほどうそっぱちなものはない。昔、米国でもブッシュ(パパ)だったか、「増税はしない」と声を出さずに言って、“read my lips” という言葉を流行らせたことがあったが、結果的にはそれは大うそだった。
それに800兆円を超える国の借金をどうするのか。それを孫子へのツケにしないためには、現在の世代が払うしかないのだから、節約は当然のこととして増税しなければならないのである(もちろんどういう形で増税するのかという問題があるからその議論は必要だ)。
そして民主党には、この選挙で圧勝しても、謙虚に政治のあり方というか政治哲学を追求してほしいと思う。米国のオバマ政権が、オープン・ガバメント・イニシアティブという「運動」を展開している。そのキーワードの1つは「トランスペアレンシー(透明性)」だ。
政府というものは一部の権力者のものではない。国民に依託されて、国を統治しているのであるから、政府はできるだけオープンでなければならないというのがその哲学である。たとえその時には公表できない「密約」であっても、例えば30年後には公表して歴史家の審判を仰ぐというぐらいの覚悟が必要である。権力の行使にはそれだけの責任が伴うものだ。核持ち込みをめぐる外務省そして自民党の姿勢には、その責任感が欠けている。これなどは、自民党には絶対できないテーマであり、民主党にとって絶好のテーマなのだと思う。
ここで選挙に勝って、民主党(というより鳩山代表)がどれだけ政治哲学を打ち立てることができるか、言葉を換えれば「友愛」をどれだけ具体化できるかが、日本の閉塞状況を打開できるかを占うと言っても過言ではない。それができなければ、民主党政権は悪くすれば2年も持たないかもしれない。
著者プロフィール
藤田正美(ふじた まさよし)
『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。
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