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鳩山政権の大きなリスク藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)

驚いた人も多かっただろう。日本郵政の社長人事をめぐり憶測は絶えない。果たして郵政改革はどこに向かうのか。

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郵政のありかたを「公開」すべき

 毎年40兆円前後の国債を発行しなければならない財務省にとっては、大きな財布があることは心強い限りだ。本来、国は借金をするのに金融市場を通さなければならない。かつて戦費を調達するために紙幣を刷るという手段をとった国は枚挙にいとまがないほどだが、その後にやってくるのは極端なインフレだ。その市場で、民間の金融機関が「どれぐらいの金利なら国に資金を貸すことができるか」を判断する。他に資金需要があれば(景気がよくて設備投資や消費者への融資に資金が必要というような状態)、国への融資も当然のことながら金利を高くしてもらわなければ貸せないということになる。それが市場の「歯止め」なのである。

 日本の場合、国と地方合わせてGDP(国内総生産)の160%を超えるような借金があるのに長期金利が低いひとつの理由は、郵貯や簡保のように黙って貸してくれる財布があるからである。だから郵政を民営化して民間の金融機関にし、市場による効率的な配分を実現しなければならない。不幸なことに昨年からの金融危機で、市場に対する信頼感が大きく揺らいでしまった。しかしそれは市場そのものの機能が損なわれたということではない。郵政民営化反対派が市場に任せることへの「恐怖心」を煽っているに過ぎないと思う。

 それに斎藤元次官は、郵政の在り方についてはまだ何にも語っていない。というよりも、民主党政権内でもまだ郵政をどう改革するのかの道筋もビジョンも示されていない。このやり方は、鳩山首相がよく言う「国民目線」とか「公開」とかいう理念とどう整合するのか。

 この郵政改革は、民主党政権にとって火種というよりはもっと深刻だと思う。やや大げさに言えば、火薬庫に火がついたような状況である。まだ消し止めることは可能だと思うが、残された時間は決して多くはない。


著者プロフィール

藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。



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