仕事と遊びが同じ?!「ネット世代が会社を変える」とタプスコット氏【後編】:Teradata PARTNERS 2009 Report(2/2 ページ)
引き続き「Teradata PARTNERS 2009」で行われたドン・タプスコット氏のゲスト講演を紹介する。同氏は、年長世代がデジタルネイティブ世代を冷静に理解し、企業が将来、人事やマーケティングの分野でどのように取り組んでいくべきかを提言する。
また、企業の採用活動や人材開発においても、企業はネット世代のやり方に学ぶ必要がある、とタプスコット氏は提言する。
従来のように、企業が一方通行型で求人し、採用するのではなく、学生や採用候補者と良い関係を築き、積極的な情報交換により、それを長期的に拡大していくことが重要であると説く。
「職務も企業が社員に対して一方的に命じるものではなく、両者の“協業”により作り出されるものでなければならない」(タプスコット氏)
マーケティングにおいても、ネット世代の市場を勝ち取るためには従来と異なる考え方が必要だ。ネット世代が商品やサービス購買の意思決定を行う際に最も重視するのは友人の意見だ。ここで言う「友人」とは必ずしも現実世界での知り合いを意味しない。それは、ソーシャルメディアや掲示板で意見を交換できる人であり、さらには、Amazonの購買履歴などを基にデータウェアハウスで分析された、自分と同じ嗜好を持つ人たちも含まれる。
「企業のマーケティング活動も、公式のチャネルを通じた一方通行型ではなく、ネット世代消費者の“友人の輪”に積極的に関与できるよう変革していくべきだ」とタプスコット氏は強調した。
集合知を活用した「BI 2.0」の可能性
Teradataのユーザーカンファレンスにふさわしい話題として、タプスコット氏は集合知を活用した「BI 2.0」についても提言している。それは、特定のユーザーが業務効率化にフォーカスした意思決定を行う従来型ビジネスインテリジェンス(BI)ではなく、多様なユーザーが真のイノベーションのために共同して分析を行うような世界だ。まだこのようなBI 2.0の姿が明確化されたとは言えないが、高度な分析を提供するデータウェアハウス関連テクノロジー、そして、組織の枠を超えた協業のためのテクノロジー(いわゆる、Enterprise 2.0)は既に存在している。両者を有機的に統合することでBI 2.0の世界は意外に早く訪れるかもしれない。
Twitterでゲスト講演を実況
ところで、タプスコット氏は講演を始める前にTwitterの公式ハッシュタグについて触れた。自分の講演をTwitterで実況してもらうことを前提としているのだ(もちろん、同氏自身もTwitterを活用している。IDはdtapscottであり、既に1万人以上のフォロアーが存在する)。
この講演に限らず、TeradataのプレスブリーフィングでもTwitterによる情報公開が奨励されていた。Teradataといえば大規模なデータウェアハウスにフォーカスしており、その顧客はかなりの規模の大企業に絞られているが、そのようなベンダーでも当たり前のようにソーシャルメディアを活用し始めているのである。
エンタープライズコンピューティングの世界、そして、その代表ともいえるデータウェアハウスの世界、そして、ネット世代の象徴ともいえるソーシャルメディアの世界をうまく活用できたユーザーは強力な差別化要素を得られるだろう。
ひょっとすると来年のTeradata PARTNERSではそのような事例講演を聴くことができるかもしれない。
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