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見捨てられる日本市場藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

どうすれば日本が世界にとって魅力的な市場になるのだろうか。日本経済を活性化させるためにも、今やらなければいけないことがある。

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東京モーターショー不振はたまたまか

 第41回東京モーターショー。世界の五大自動車ショーのひとつと言うわりには、幕張の会場には大げさに言えば悲哀感さえ漂う。何といっても出品者数は2007年の246社から今回は113社へと半減した。しかも海外の自動車メーカーで出品したのはわずか3社である。

 もちろん昨年秋からの金融危機に伴う景気の悪化で、米GMは政府の支援を受けざるを得なくなった。フォードも公的支援までは受けなかったものの業績の悪化は同じである。欧州勢も同じような状況である。しかしそれだけではあるまい。日本という市場が自動車メーカーにとって魅力のないものになっているという証左でもある。

 実際、今年4月に開かれた上海国際モーターショーでは、新国際博覧センターの展示室をすべて使い(合計17万平方メートル)、1500社の展示が行われた。中国の自動車市場は、昨年は金融危機の影響を受けて1000万台に乗せ損なったが今年は間違いなく1000万台に達する。単独の市場としては世界最大になる可能性が高い。

 人口だけとってみても、日本の10倍。日本の自動車販売台数がざっと500万台だから、中国の消費者の所得が伸びてくれば、将来的には中国だけで年間販売台数が5000万台という時代もやってくる(この販売台数はヨーロッパ、北米、日本の総販売台数よりもはるかに大きいのである)。

 それに比べて日本はどうだろう。ピーク時には日本でも780万台の車が売れた。それが現在500万台ということだが、景気の悪さだけが理由ではない。かつては若者(自動車ユーザーのエントリー層と呼ばれる)が最も欲しいものといえば、自動車だった。団塊の世代であるわたしたちでいえば、自動車を買うことは夢であり、運転免許証を取ることはその夢への第一歩でもあった。

 しかし今では一番欲しい物は何かというアンケートで、自動車が上位に来ることはない。ベストテンにかろうじて残る程度なのである。エントリー層である若者が自動車を欲しがらなくなっては、車の販売台数が伸びるはずもない。まして若者の数は減っている。日本の自動車販売台数がかつてのピークを超えるということはあり得ないのである。景気が多少回復しても500万台前後が精一杯ということになれば、海外の自動車メーカーが日本市場に興味を持たなくなるのも無理はあるまい。

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