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見捨てられる日本市場藤田正美の「まるごとオブザーバー」(2/2 ページ)

どうすれば日本が世界にとって魅力的な市場になるのだろうか。日本経済を活性化させるためにも、今やらなければいけないことがある。

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民族資本と外国資本

 かつて日本の自動車産業を守るために、通産省や運輸省といった役所は、陰に陽に外国メーカーの締め出しを図っていた。今でこそ何の意味もなくなりつつある乗用車の3ナンバーと5ナンバーの区別。自動車のサイズやエンジンの排気量で区別されていた。道が狭いとかいろいろ理屈はつけていたが、日本の小型車市場を海外メーカーから守るためである。その中で軽自動車というこれまた日本特有の規格ができていった。

 関税などで輸入規制をするのではなく、安全基準や自動車に関わる税金などで海外メーカーを不利にするという官僚の後押しがあったのである。もちろんそうした規制の中には当然やるべきだと思われるものもないではない。例えばブレーキランプと方向指示ランプの色を変える(日本では前者が赤、後者が黄色なのだが、アメリカでは必ずしもそうではなかった)というのは合理的だったと思う。しかし規制の多くは、要するに日本市場の保護という観点で設けられたものである。

 その結果、日本というマーケットで外国メーカーがシェアを獲得するのは難しくなった。今年上半期でも海外メーカーの販売台数はわずか8万台程度である。そのシェアは5%にも満たない。もちろん海外メーカーの低シェアがすべて日本の国策のためであるというつもりはない。とりわけ米自動車メーカーは日本で売るための努力をしてこなかったと思う。例えば右ハンドルにするということすらしなかった。

 ともあれ、通産省や運輸省の目論見は見事に成功した。日本のトヨタ自動車は世界最大の自動車メーカーになった。日本の道路に外車があふれるという光景もない。しかしその結果、何が起きたか。海外ブランドでベルサーチが撤退したように、これからは日本市場から撤退する海外企業が続々と出てくる。自動車産業もおそらく例外ではない。

 日本企業ですら、国内マーケットでの成長をあきらめ、海外での展開力をつけるために国内で強者連合をつくろうとしているときに、わざわざ日本という閉鎖的なマーケットに進出しようという海外企業が現れるとは思えない。その意味で、まさに日本は見捨てられた市場になろうとしているのである。

 もうこれまでのいわゆる民族資本と外国資本という分類は止めたほうがいいかもしれない。日本の消費者が受け入れるのなら、海外資本でも民族資本でも構わない。対等に競争することが、日本という国の経済を活性化させる道であると思い定めるべきなのである。例えば流通などでは百貨店、スーパー、コンビニと続々前年割れとなっているときに、連日にぎわっているコストコのような店もある。そこで買い物をしている人は、コストコが外国資本であることなど気にしてはいない。

 閑散とした東京モーターショーは、日本の閉鎖性がもたらした当然の現象と言ってもいいかもしれない。そこに気付かないと、東京モーターショーはいつの間にか過去のものになってしまう可能性だってあるのである。


著者プロフィール

藤田正美(ふじた まさよし)

『ニューズウィーク日本版』元編集長。1948年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、『週刊東洋経済』の記者・編集者として14年間の経験を積む。85年に「よりグローバルな視点」を求めて『ニューズウィーク日本版』創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年同誌編集長。2001年〜2004年3月同誌編集主幹。インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテータとして出演。2004年4月からはフリーランスとして現在に至る。



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