豊富な商品知識がアダになる:つい踏んでしまうプレゼン失敗の地雷(1/2 ページ)
「新商品の魅力を伝えたい!」。そうした思いからとにかく詰め込んだ知識をプレゼンテーションする人がいる。顧客は本当にそんな話を聞きたいと思っていたのだろうか。
「ウチの課長は、とにかく商品知識が半端じゃない。営業なのに技術にも精通しています。だからいつも誰かが相談に来ているのです」。こんな人、どの組織にも必ずいますよね。社内で誰もが頼りにする、歩く商品知識みたいな人。プレゼンの時には、その豊富な知識を武器に、顧客をきっちり説得してみせます。
でも、商品の魅力を売り込めば提案が通る、というほどプレゼンは単純ではありません。今回はそんな場面で陥りやすい失敗について考えてみましょう。
「何を提案しようか」は大きな過ち
プレゼンテーションを行う典型的なケースに、新商品の提案があります。読者の皆さんはこんなとき、最初に考えなければならないことは何だと思いますか? 唐突ですが、少し考えてみてください。
具体的な事例で話を進めてみましょう。例えば、メーカーK社の営業担当であるY君が来月発売の新商品を顧客である販売店に対してプレゼンしようとしている、こんな場面を思い浮かべてみて下さい。今回の新商品はK社が開発した新技術を盛り込んだ自慢の商品。「新技術の魅力が伝われば必ず売れるはず」と、Y君も相当気合いが入っているようです。さっそく企画書の作成準備に入りました。
さて、もしあなたがY君だったら、まず何を考えますか? 新商品の特徴、自慢の新技術の紹介方法、競合商品との比較、販売促進の方法……。きっとたくさんの項目が思い浮かぶでしょう。しかし、実はこの段階ですでにずれているのです。
一般的にプレゼンを考え始める時に多くの人が犯しやすい過ちは、「何を提案しようか」を考えようとすることです。結論から言えば、最初に考えるべきは、「何のために提案を行うのか」です。つまり、プレゼンが通るかどうかは、新商品が優れているかどうかではなく、顧客の要望に合っているかどうかで決まるのです。
新技術など求めていない
再度Y君の話で整理しましょう。Y君が説得しようと思っている販売店が、その商品を購入するポイントは何なのか。営業担当者としては、非常にその商品に自信があり、豊富な商品知識をフル活用して、新商品の魅力をアピールしたいところです。ところが一向にお客さんは話にのってこない。なぜか?
もしお客さんがK社に対して期待していることが、価格だったり、納期だったりしたらどうでしょうか。いくら性能が画期的に向上した新商品であっても、価格が高く、出荷まで時間がかかるようであれば、熱のこもったY君のプレゼンも空振りに終わるのは目に見えています。お客さんのニーズ=目的に応えていないプレゼンは、いくら商品に魅力があっても、どんなに情熱的に伝えても、成功には至らないのです。
新商品をPRしたい、新技術を理解してもらいたいというのは、こちらの都合でしかありません。特に新商品に自信がある場合は、その良さを何とか伝えよう、分かってもらおうという意識が強く作用します。商品知識の習得にも余念がありません。こちらの思い入れが強くなればなるほど、相手の思いを見失いがちになるのです。プレゼンには相手があり、まず考えるべきことは、相手の都合なのです。プレゼンの企画は、内容を検討する前にまず、お客さんがプレゼンを受ける目的を正しく把握することから始まるのです。
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