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楽観はできないが、雇用情勢に回復の兆しも景気探検(2/2 ページ)

年末を間近に控えてこの先の雇用情勢が懸念されている。参考指標となるであろう自殺者やホームレスの数はピーク時から減少傾向にあり、改善の兆しを垣間見ることができる。

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ホームレスの数がピーク時の6割近くまで減少

 総務省が発表した9月分の完全失業率は5.3%で、7月分の5.7%をピークに8月分の5.5%に続いて前月より0.2ポイント低下して5.3%と、2カ月連続で改善した。9月分の有効求人倍率も0.01ポイント上昇し、0.43倍と2年4カ月ぶりの回復だった。もっとも、いずれの水準も依然として厳しいことに変わりはない。

 年末を間近に控えて、この先の雇用情勢が懸念されている。その雇用関連の限界的な指標と見られるのが自殺者である。警察庁の月次調査によると、2009年1〜8月の自殺者数は毎月3000人前後で、前年同月比でプラスになっていた。なかでも4月と5月はいずれも同6.9%増と突出して高かった。失業率や有効求人倍率が悪化の一途をたどっていた時期と重なる。ところが、9月分では一転して2475人と同8.8%も減ったのである。

 もう1つの参考指標は「ホームレス」である。東京都福祉局の調査によると2009年8月時点の東京23区内のホームレスの数が2499人と、8月時点のデータがある1996年以降最も少ないことが分かった。ホームレスの数のピークが、金融危機直後の1999年の5798人だから6割近い減少になる。ホームレスのメッカ的な場所とされる隅田川沿いエリアのブルーシートの家の数も往時ほどではない。現在の方が数段マシであると言えよう。

 ホームレスの数が意外に少ないのは、これまで実感がないとは言っても戦後最長の景気拡張局面が続いたことと、今回の景気後退局面が13カ月で済んだことに関係していると見ている。戦後の景気後退局面の平均は16カ月であり、3カ月の差が最悪の事態を回避させることになったのではないかとみられる。こう解釈すれば、雇用情勢の先行きはもちろん楽観はできないものの、改善の方向に動き出す兆しが出てきたのではないかと考えられよう。


著者プロフィール

宅森昭吉(たくもり あきよし)

「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。



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