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“ガラパゴス”からどう脱出するか、グローバル化するためのヒントSFC ORF 2009 Report(1/2 ページ)

慶應義塾大学SFC研究所の年次イベント「ORF 2009」では、閉塞(へいそく)感の漂う日本企業がグローバル市場で活躍するためのヒントを探る討論が開かれた。インターネット企業の取り組みから、日本人が何を目指せば良いか。その模様をお伝えする。

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 慶應義塾大学SFC研究所が研究成果を紹介する年次イベント「慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2009(ORF2009)」が11月23〜24日、都内で開催された。イベントのメインセッションでは、「ガラパゴスを脱せるか? ―ネットが創造する新社会―」というテーマで、閉塞(へいそく)感の漂う日本企業がグローバル市場で活躍するためのヒントを探る討論が行われた。

 セッションにはグーグルの辻野晃一郎社長、クックパッドの佐野陽光代表執行役、慶大総合政策学部の國領二郎教授、同政策・メディア研究科の金正勲准教授が登壇。それぞれの取り組みを踏まえ、日本社会が直面する課題とグローバル化に求められる要素を取り上げた。

閉塞感を打ち破るイノベーション


辻野晃一郎 グーグル社長

 辻野氏と佐野氏はビジネスに対する社是や信念を紹介し、閉塞感を打破するイノベーションについての考えを示す。まず、辻野氏は「世界中の情報を集めて整理し、アクセスできるようにするというのがGoogleの社是であり、イノベーションを宿命としている会社だ」と話した。

 同氏によれば、Googleはその存在を1つのエコシステムと見なし、その中でAndroidやChromeといった無数のビジネスが展開される仕組みになる。同社はインターネットやWebはさまざまな将来性や恩恵を実現してくれると確信しており、例えばAndroidやChromeは将来のクラウドコンピューティングに不可欠だという考えから、それら単体で収益を目指すものではないという。

 「さらに言えばGoogleには中期計画も長期計画も無い。ビジョンの実現に必要なことへ取り組んでいる」(同氏)。こうした考えから、1つのビジネスを特定の市場だけで展開するだけではなく、世界で同時に立ち上げるのが同社のスタイルとなっている。


佐野陽光 クックパッド代表執行役

 佐野氏が創業したクックパッドは、家庭料理のレシピをユーザーが投稿、共有できるサービスを提供する。現在の月間ユーザー数は約816万人で98%を女性が占める。ユーザー規模は、国内世帯の15%に相当するという。同氏が掲げる信念は「料理を通じて日々の生活を楽しくする」というもので、この信念に徹してサービスを広げてきた。

 「日本の食文化は世界に誇れるほど豊かだと思う。そして、日本に限らず世界各地の食文化を世界中に伝えいくというのが当社のビジョンだ」(佐野氏)

 同氏はまた、「イノベーションという言葉を解釈すると“大量の失敗”だろう。失敗の中から1つのイノベーションが生まれる。今の日本は大量の失敗を許容してくれる社会だろうか。少なくとも日本は食が豊かで、餓死する人がほとんどいない国としてすばらしいと思う」と話した。

 同氏によれば、インターネットの出現は容易に失敗できる環境を実現した。「お金を掛けなくてもたくさん失敗してイノベーションを生み出せるようになった。それでも世界から必要とされているものの、ごく一部しか実現していないだろう。インターネットが普及している日本は大量の失敗ができるフィールドで、グローバル化のチャンスがたくさんある」(同氏)

 一方、辻野氏が考えるイノベーションとは世界に受け入れられて初めて意味を持つものだという。「イノベーションになるのには優れた技術やアイデアをスケールアウトできるかどうかだろう。例えばGoogleでは著作権違反を検出する技術を開発し、国内外の著作権団体や関係機関へ地道に説明して理解してもらうことで、コンテンツを活用していく道筋を作れた。アイデアがあってもその後の努力が大事だ」

 同氏は、広く指摘されてきた日本がイノベーションでグローバル市場に進出できないという見方も否定する。「日本はイノベーションで成立している国だ。残念なのはそれを世界に発信したり、広めたりするのが苦手なこと。日本全体がイノベーションに弱いという指摘は間違っている」

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