“ガラパゴス”からどう脱出するか、グローバル化するためのヒント:SFC ORF 2009 Report(2/2 ページ)
慶應義塾大学SFC研究所の年次イベント「ORF 2009」では、閉塞(へいそく)感の漂う日本企業がグローバル市場で活躍するためのヒントを探る討論が開かれた。インターネット企業の取り組みから、日本人が何を目指せば良いか。その模様をお伝えする。
日本がガラパゴス化する理由
國領氏は日本社会の現状について、「作り出した製品やサービスが単独でビジネスとして成立していた時代には自信が伴っていたものの、エコシステムによる水平分業のビジネスモデルが全盛となり、それに適用できないためだろう」と指摘した。国内でも1990年代後半にベンチャー企業を育成する法整備などが進められたが、うまく浸透できなかったことが、現在の閉塞感につながっているという。
「国内に十分な市場規模や働き口がなく、起業するしかないというのが海外の実情。日本も戦後は大量の起業と廃業が繰り返されて、生き残った企業が世界的になった。しかし、イノベーションを続けられなかった」(同氏)
辻野氏は、「今でも世界で知られる日本の起業家は本田宗一郎さん(ホンダ)や盛田昭夫さん(ソニー)ぐらい。彼らは日本人が今よりマイノリティな時代に世界に出て成功したが、その背景には自分たちのビジョンが成功するという確信があった。米国ではこうした気概がイノベーションを作り、産業の新陳代謝が活発だ。日本が一回りする間に米国は3周も4周もしている」と話した。
また、同氏は日米での教育の違いにも触れた。米国にはディベート授業を例に個人の主張を表現する演出手段を学ぶ機会があるが、日本のスタイルは受け身であるという。「そうした方法が良いか悪いかということではなく、自らの信念をスケールさせるエネルギーを育める」
佐野氏も、グローバル市場に出ざるを得ないといった危機感や、個人の表現力の重要性を指摘する。「グローバルという視点を持つことは何においても不可欠。個人の差はあるが、最終的には世界で何をするのかという意識を持って、目前から始められることをしっかりとやるべきだ」と述べた。
チャンスを生かせる人材を
政策の研究を手掛ける金氏は、グローバル進出する企業には2つの特徴があるという。1つは自国の市場規模が小さく、企業として成長するにはグローバル市場に進出せざるを得ないケース。もう1つはすでに先進的な製品やサービスを確立し、グローバルにも展開できるケースだ。
「日本は後者であり、優位な立場だ。残念なのは国内だけで一定規模のビジネスを確立でき、それに甘んじていることだろう。自社の製品やサービスをはぐくんだ国内市場に敬意を払いつつ、それをグローバルに広げるという気概で国内にとどまるべきではない」(同氏)
國領氏は金氏の指摘を踏まえ、グローバル市場に進出せざるを得ないケースでは、例えば第2世代携帯電話規格「GSM」の展開で成長したNokiaなどがあると紹介。しかし、国産技術を世界標準にしようとするような日本の活動は、中途半端な形につながり、現在のような閉塞感につながっていると解説した。
日本企業がグローバル市場で立場を築くためにはどうすべきか。佐野氏は、「ネットワークのレイヤモデルのように、あるレイヤは別の国や企業に任せて、違うレイヤで勝負する方法もある」と話した。辻野氏は、「インターネットはマスの世界であり、1つのプラットフォーム上でオープンに競争が展開され、多くのユーザーが仕上げていく。例えばGoogleもプラットフォームを提供しているが、その上にあるサービスや製品までも囲い込むことはせず、オープンな競争を求めている」と述べた。
最後に日本社会がグローバル化していくための方法として、各氏は以下のような点を指摘した。
「若い人がグローバルな世界を意識し、異なる国や地域の人々とコラボレーションできる素質を身に付けてほしい。相手は日本人だけではないと考えるべき」(辻野氏)
「個人がグローバルな視点を持てる環境が整いつつあり、特に企業のビジネスと個人のグローバルな意思決定力をうまくつなげていく仕組みが大切」(佐野氏)
「若い人にいきなり企業の論理を示しても難しい。まずは身近な問題に自分で立ち向かい、グローバル視点を伴って考えられるようにしていくことが重要」(國領氏)
「制度面として日本にグローバル化やイノベーションを阻害する要因は見当たらない。個人がこうした意識を持って活躍できる風土にすることが成功につながる」(金氏)
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