【第14話】漏れなく、ダブりなく:内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)
沈黙のブレインストーミングによって、4人は何とか解決策の洗い出しを終えた。川口はこれ以上の集中した作業を行うのは困難と判断し、余談を交えて脳をほぐす演習を与えた。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ
ブレインライティング手法で解決策を洗い出す作業は40分程度でシートが1周し、48個のアイデアが書き出された。沈黙のブレインストーミングと呼ばれるこの手法は、作業過程で発表などを行わないため、息を抜く瞬間がなく脳をフル回転させて臨まなくてはならない。そのため、同じ40分でも通常のブレインストーミングとは疲労度が違う。
川口は、用意してあったクッキーを1個ずつみんなに配った。炭水化物に含まれる糖質は、脳や神経系に対する唯一のエネルギー源と言われている。長時間神経を集中させて使う作業などの際には、糖質を補給するなどして、リフレッシュしながら行うのが効果的だ。ましてや、阿部と浅賀は、今回が初めての参加である。少し余裕を持って進めた方が良いと川口は判断した。
漏れやダブりを防ぐ「MECE」
川口は配ったクッキーを食べるように促しながらホワイトボードに向かって「MECE」と大きく書いた。
「皆、この意味を知っているかな?」
「エム・イー・シー・イーですか。何かの略ですか」と浅賀が問い返した。川口は、大きなMECEの文字の下に、フルスペルで“Mutually Exclusive Collectively Exhaustive”と書きながら説明を始めた。
「MECEとは“Mutually Exclusive Collectively Exhaustive”の略で、論点をダブりなく、漏れなくとらえることをいう。MECEの考え方は、グループ化や階層化、あるいは問題解決などにおける発散技法(洗い出し)など、あらゆる場面で意識すべき論理思考における基本的な考え方なのだ」
川口は、ホワイトボードに図を書きながら続けた(図1)。
「問題や解決策などの洗出し、個条書きの表現、物事の分類などの際に漏れやダブりがないことを確認するのが重要だ。例えば、スポーツの種目を個人競技と団体競技に分類した場合、ダブルスとシングルスのあるテニスや、個人と団体のある体操競技などはダブりとなってしまう。一方、陸上競技を『走る競技』『投げる競技』『飛ぶ競技』の3つに分類した場合、競歩はどこにも属さないため漏れが出てしまう。これらのようにダブりがあったり、漏れがあったりした場合を、MECEになっていないという。
だから、今日のように発散の作業などを行った後には、洗い出したアイデアを一覧してみてMECEになっているかを確認する必要があるのだ。ダブりについては、重複しているものを1つまとめるか、どちらかを捨ててしまえばいいが、漏れの場合は大切な事柄が洗い出されていないこともあるため注意しなくてはならない」
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