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【第14話】漏れなく、ダブりなく内山悟志の「IT人材育成物語」(2/2 ページ)

沈黙のブレインストーミングによって、4人は何とか解決策の洗い出しを終えた。川口はこれ以上の集中した作業を行うのは困難と判断し、余談を交えて脳をほぐす演習を与えた。

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分類の訓練

「それでは、先ほど例に挙げたスポーツ競技の種目をMECEになるように分類してみてごらん」という川口の問い掛けに、4人はしばらく考え込んだ。

 分類のアプローチには大きく2つの方法がある。1つは分類の軸からから考えるアプローチで、もう1つは要素を洗い出してその特徴を分類するアプローチだ。いわば、前者が演繹的アプローチ、後者が帰納的アプローチと言える。

 軸から考えるアプローチの場合はどうなるであろうか。まず、さまざまなスポーツを分類する軸を考える。球技と非球技、オリンピック競技と非オリンピック競技、個人競技と団体競技、相手と直接対戦する競技と記録で争う競技など多数の軸が存在する。勝敗の判定方法という軸を考えて、「距離」「時間」「スコア」という具合にその判定要素を挙げていく方法もある。軸から考えるアプローチは難しく、該当する問題や課題に対する知識を必要とする。特徴をうまくとらえた良い軸を見つけるには、ある意味その分野に対して直感が働かなければならない。

 これに対して、要素を洗い出してその特徴を分類する方法は比較的取り組みやすい。対象となる領域に属する要素を1つ1つ洗出し、それぞれの特徴を列挙していくところから始めればよい。例えば、スポーツ競技の場合は以下のように洗い出す。

  • 相撲:伝統的、日本発、1対1の対戦、競技時間が短い
  • 走り高跳び:記録を残す、高さを競う、個人競技、オリンピック種目
  • ゴルフ:球技、プロ選手がいる、スコアを競う

 このように多数の要素例とその特徴を書き出し、共通するグループを作れるような分類を見つけるのである。この方法であれば該当する問題、課題に対する知識が乏しかったとしても知っているところから作業を始められるため、取組みやすいアプローチと言える。

 実際には、直感で思いついた軸で分類して、そこにいくつかの要素を当てはめてみたり、逆にいくつか要素を挙げるうちに良さそうな軸が見つかったりと演繹的アプローチと帰納的アプローチを無意識のうちに併用することで分類が完成していることも多い。

 4人はさまざまな分類を提案しては、「それだと○○が抜ける」「そうすると□□がダブってしまう」と楽しみながら分類の訓練を行った。


著者プロフィール

内山悟志(うちやま さとし)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) 代表取締役/プリンシパル・アナリスト

大手外資系企業の情報システム部門、データクエスト・ジャパン株式会社のシニア・アナリストを経て、1994年、情報技術研究所(現ITR)を設立し代表取締役に就任。ガートナーグループ・ジャパン・リサーチ・センター代表を兼務する。現在は、IT戦略、IT投資、IT組織運営などの分野を専門とするアナリストとして活動。近著は「名前だけのITコンサルなんていらない」(翔泳社)、「日本版SOX法 IT統制実践法」(SRC)、そのほか寄稿記事、講演など多数。



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