【第9話】収束の技法:内山悟志の「IT人材育成物語」(1/2 ページ)
カードBS法によって約50の課題が洗い出された。問題解決のためには、収束の技法を使ってこれを構造化しなければならない。川口は、構造化のために必要な類型化(グルーピング)と抽象化について説明した。
内山悟志の「IT人材育成物語」 前回までのあらすじ
3人は休憩を終えて“最後のひと絞り”のためにカードBS法をもう1クール行った。スタートしてから1時間余りで、約50枚の付箋紙がびっしりと模造紙に張り詰められた。最後に重複するものや類似したカードを整理して、「事業に貢献するIT活用のあり方」というテーマに対する課題の洗出しは終わった(図1)。
書き出された課題を眺めてみると、粒度の大きなものから細かなものまでさまざまで、対象となっている領域も多岐にわたっていることが分かる。これから、これらの課題に対する解決策を検討していくわけだが、このままでは何から手をつけていいやら雲をつかむような話だ。問題解決の流れに沿って考えると、次は、収束の技法を使ってこれらの課題の因果関係や構造を把握する必要がある。
収束の技法
川口は、収束の技法とそこで必要となる考え方について説明した。
「ビジネス上の課題を整理して、全体の構造を把握する時によく使われる手法には、因果分析法や帰納法などがある。因果分析法の代表的な表現技法としてイシュー・ツリーがある。課題を“原因”と“結果”で親子関係のようにひも付けていき、粒度の大きな課題から細かなものまでを階層的にまとめていくものだ。
帰納法の表現技法ではKJ法がよく知られている。KJ法は、アイデアを内容が本質的に似ているという観点から小さなグループを作り、それぞれのグループの内容に対して、要点を押さえたタイトルをつける。次に、グループ化されたものを同様に似たもの同士で中グループにまとめ、またそれにタイトルをつける。さらに、中グループ同士の類似性から大グループへと、段階的に上位レベルへとグループ分けをしていく。イシュー・ツリーがだんだん詳細化していくのに対して、KJ法は小さなグループからボトムアップでグループ化していくのだ」
川口が一気に説明を続けようとするのを、「なぜKJ法っていう名前なのですか?」と奥山がさえぎって質問した。
「KJ法は文化人類学者の川喜田二郎氏が1960年代に考案したものなので、そのイニシャルをとってKJ法を名付けられたのだよ」と川口が答えると、「へぇ。日本人が考えた手法なのですか」と宮下が感心した表情で合いの手を入れた。
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