「頭を使わない選手は何をしても駄目」――元ロッテ・小宮山悟投手【前編】:世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)
プロ野球選手として19年にわたり第一線で活躍した小宮山悟投手は、日本のみならず米メジャーリーグにも挑戦しさまざまな経験を積んだ。そこから学んだことはビジネスの世界にも通じるものがあるという。
頭で理解できない選手は駄目
研究好きが功を奏したのか、野球人生を通じて多様な球種を習得しました。振り返ると、小学生のときに投げたカーブが基本になっています。逆の回転を与えれば反対に曲がるし、回転の速さを変えれば曲がり幅が小さくなるだろうと仮説を立てて実践していました。誰にも教えられることなく変化球を投げるようになりました。
投げ方は身体で覚えるのも必要ですけど、それ以前に頭である程度理解していなければスムーズに習得できません。何人もの選手を見て築いた自論です。カーブの投げ方を教えてくださいとやって来る選手がいて、基本的なことは教えてあげるのですが、うまく投げられない。そうしたときに、「なぜ自分はカーブが投げられないのか」について深く考えない選手は何をやっても駄目でしょう。次のステップに進めません。きちんと考えられるかどうかが分かれ目だと思います。わたしの場合は、いつも「なぜ」というキーワードが頭の中にありました。そのため、次のステップに進むにはどうすればいいか、すぐに切り換えて考えていました。
ほとんどの変化球は投げられるのですが、どれだけ努力してもナックルボールは習得できませんでした。バレンタイン監督からも投球の幅を広げるために投げろと言われたため、投げ方を模索した結果、ナックルボールのような変化をする魔球「シェイク」が生まれました。ただし、正式なナックルボールではありませんし、ナックルボールを投げる人に対する敬意もあったので、シェイクと名付けました。
ところで、「投げる精密機械」「ミスター・コントロール」といったニックネームがあるそうですが、自分で名乗っているわけではないので勝手にしてくれという感じです。わたし自身はコントロールがかなりアバウトだと思っています。性格についても、完璧を求めているように見えて、意外と及第点は低いところに設定していたり、ざっくばらんなところがあります。気難しそうだという周囲のイメージとのギャップが大きいようで、初めて会った人に「こんな人だとは思わなかった」とよく言われますね。
あえて完璧主義のように振舞うこともあります。若手選手はわたしのことを怖くて近寄りがたいと言いますが、「近寄るな」というオーラを出していますし、実際に怖い部分もあるはずです。例えば、野球を教えてほしいと相談してくる選手には丁寧に教えてあげますが、きちんと体得できなかったり、頼んできたにもかかわらず途中で投げ出してしまうようであれば、二度と許さないという厳しい態度で接しています。(談)
後編「一生懸命になれなかったメジャー時代を反省」に続く
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