「一生懸命になれなかったメジャー時代を反省」――元ロッテ・小宮山悟投手【後編】:世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)
早稲田大学3年時、小宮山投手は後に「人生の師」と仰ぐことになる名監督に出会う。日本でのプロ野球生活を経て、メジャーリーグに挑戦した小宮山氏だったが、その監督から受けた教えを守れず、わずか1年で帰国してしまったことを後悔する。
メジャー時代を深く反省
その意味で、メジャーリーグでの1年間をとても反省しています。どうして一生懸命できなかったのだろうと。本当に毎日ふざけて生活していました。わたしの中ではメジャーリーグでプレーできることが「ご褒美」になっていました。一生懸命頑張ろうという思いは心のどこかにあったのでしょうけど、それよりも神様がくれた最後のチャンスだから楽しまなければ損だという気持ちの方が強かったのです。ハングリーさが欠けていました。
文化の違いや食べ物なども全然苦になりませんでした。日本にいるときは細かく食事メニューを決めていたのですが、米国ではまったくお構いなしで、まるで観光客気分でした。もう一度人生をやり直せるのであれば、あの時に戻りたいです。
最近は仕事に一生懸命になれないと感じるビジネスマンが多いようですが、「この会社でいいか」と最初に妥協した人はその時点でマイナススタートなので仕方ないと思います。自分のやりたい仕事を最初からできる人はごく一部で、それ以外の不本意ながら働いている人たちは、その仕事の中で何かを見つけなければなりません。もし見つからないのであれば、そんな仕事はやめた方がいい。仕事に楽しさがなければ、やっていても意味がありません。
けがを察知する力
「好きこそものの上手なれ」とあるように、これまでの人生を振り返ると、とにかく野球が大好きで、明けても暮れても野球漬けでした。子どものころはコーチにバットで尻を叩かれ、厳しいことを言われながらも、野球が大好きだからやめずに続けていました。高校時代はとても甲子園に行けるレベルではなかったけれど、やはり野球が好きだから、大学に進学しても続けたいという思いを持っていました。ひょんなことから六大学野球の試合を見て早大に行きたいと思うようになり、気が付いたら今に至っていたわけです。とにかく野球が好きだという思いをなくさないことが大切です。
けがをしないことも重要です。幼いときのけがはまだ取り返しがつきますが、年を重ねるにつれて致命傷になります。わたしがプロ野球で19年間やってきて大きな故障をしなかったのは、何よりも丈夫な身体に生んでくれた親の存在があり、故障しないような理にかなった投げ方を子どものころから身に付けていたことが大きいです。ピッチングの才能はさほどなかったかもしれませんが、単純にボールを投げるという才能については非常に高いレベルだったと思います。
小学生のころは朝から晩までずっとボールを投げ続けていても、どこも痛くなりませんでしたし、ボールを投げて肩肘が痛くなるなど想像もできませんでした。スポーツ肘だといって、シップを貼り包帯をぐるぐる巻いている同級生を見て、不思議に感じていましたね。
大学時代には想像を絶するような酷使をしているのですが、あと一歩で故障しそうだというときに身体が危険信号を送ってくれて、それを感じ取り未然に故障を防いだこともありました。皆に言うのは、毎日同じことをしていて、何か違う症状が表われたら、それは間違いなく危険だというサインなのです。それを察知できるかどうかが故障の境目で、そのサインに気付かない鈍感な人は故障してしまうのです。度を超すから故障するわけで、自分の限界レベルをきちんと管理しておけば故障は防げるはずです。(談)
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