欧州は成長をあきらめたのか:「世界一蹴の旅」からすべて教わった(1/2 ページ)
「何かが物足りない」――。ヨーロッパ各国を周遊するにつれ、当初から抱いていた違和感は次第に大きくなっていった。
サッカーワールドカップ(W杯)出場32カ国を周る「世界一蹴の旅」に出て、約半年が経過した。11月半ばに行われた欧州の最終プレーオフが終了し、いよいよ来年のワールドカップ本大会の出場国すべてが出そろうことになった。
FW・アンリの“神の手”によって、ワールドカップ出場を決めたフランス。僕らは、彼らの出場を事前に予想し、出場決定する前にフランス首都であるパリを訪れていた。
欧州で抱いた違和感
7月から約2カ月間、アジア諸国を歴訪し、中国やASEAN(東南アジア諸国連合)などの国々で猛烈な経済発展への意欲やパワーを目の当たりにしてきた。その後、9月からはオランダ、スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国を周り、フランスのパリへ到着したのだった。パリでの滞在中に、僕らが欧州到着以降に抱いていた「違和感」が顕在化するようになった。
何かが物足りないのである。
当然ながらアジア諸国、いや日本と比較しても、発展した経済、文化、技術などを持っており、物価水準も日本より高い。しかし、アジアで触れた人々からの溢れるようなパワー、未来への希望感が、街から感じ取れないのだ。
すでに発展や成長の余地がないのであればまだしも、少なくともパリの地下鉄の様相は、「花の都パリ」というイメージからはほど遠いほど汚く、危険なにおいがする(実際、パリの地下鉄では犯罪が多発している)。コンビニエンスストアにしても、なかなか街中で目にすることはできず、夜間や休日のちょっとした買い物の不便さといったら、日本とは比較にならない。一方、経済活動から離れ、彼らの日常生活をのぞくと、充実した“人間らしい”生活を送っているようにも見える。
すべてがそうではないことは重々承知しているが、今回の旅を通じて肌で感じたのは、「欧州の人々は、これ以上の(経済)成長をあきらめ、より人間の生活内部の質(豊かさ)を高めようとしているのではないか」ということである。
スイスで働く日本人ビジネスマンと会話する機会があったのだが、彼曰く「“Quality of Life”(生活の質)を求めるなら確実に欧州」だそうだ。確かに、アフター5や休日の過ごし方を聞く限り、少なくとも東京や大阪でモーレツに働くサラリーマンとはだいぶ違う印象を受けた。
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