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経営者はBSCで変化に柔軟に対応できる仕組みづくりを――早稲田大学商学学術院・長谷川氏(1/2 ページ)

好景気に伴い企業が業績を伸ばしていった時代はとうの昔に過ぎ去った。現在の劇的な経営環境の変化に対応し、戦略を円滑に見直す上で欠くことができないのが、バランスト・スコアカードだという。

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低成長期時代の差別化は経営戦略が“鍵”に

早稲田大学商学学術院の長谷川惠一教授
早稲田大学商学学術院の長谷川惠一教授

 企業経営における「戦略」の重要性が増していることに異論を挟む向きはあるまい。高度成長期のように安定した経営環境にある時代であれば、定型的な業務で大きな誤りを犯すことがない限り、企業は総じて売り上げを伸ばすことが可能であった。だが、高度安定成長時代が終焉を迎え、低成長時代に突入したことで、戦略的な経営を抜きにしては他者との差別化、ひいては利益のさらなる拡大が困難になっているからだ。

 もっとも、これまで多くの企業でさまざまな戦略が練られ、経営の意思決定に反映されてきた。しかしながら、それらが成功裏に遂行されなかったことがあるのも、また事実である。それはなぜなのか。早稲田大学商学学術院の長谷川惠一教授は、11月12日に早稲田大学IT戦略研究所が開催した「第28回 インタラクティブミーティング」における講演の冒頭でその疑問について次のように解説した。

「経営環境が変化し、戦略の前提が崩れてしまうことが要因の1つだ。さらに、戦略が中長期的なものであるのに対し、短期的な予算で遂行しようとし、いわば戦略の遂行の仕方を誤ってしまうことが原因として挙げられるだろう。こうした変化に対応し、戦略を円滑に見直す上で欠くことができないのが、バランスト・スコアカード(BSC)なのだ」

経営戦略を予算にまで落とし込むためのBSC

 BSCは1992年にハーバード・ビジネス・スクールのロバート・S・キャプラン教授などによって発表された業績評価システムとして一般的に知られている。だが、長谷川氏によると、その本質は戦略を成功させるためのマネジメントシステムにほかならないという。戦略のロジックをBSCおよび戦略マップで示し、戦略を遂行するための具体的な実行プログラムにまで展開することで、「戦略」を「予算」に落とし込むためのツールに位置付けられるというわけだ。

「BSCを利用することで、これまで連携が弱いとされた戦略と予算をマネジメントする仕組みを経営プロセスに追加することが可能だ。その結果、為替レートの変動など、戦略の前提が変わってしまった場合にも、いかに対応すべきかを迅速に見極めることが可能になる。事実、BSCを利用することで、4つの視点で戦略を現場の施策に落とし込むための仕組みを実現できる」(長谷川氏)

 BSCにおける4つの視点とは、財務の視点、顧客の視点、内部業務プロセスの視点、学習と成長の視点、である。加えて、それらにまたがる戦略テーマを柱として定めた「戦略マップ」を作成し、(1)戦略のロジックから展開する「戦略目標」、(2)戦略目標の達成度を測る「尺度」、(3)尺度のメモリによって設定する「目標値」、(4)具体的名実行プログラムである「戦略的実施項目」を設定することで、戦略を具体的なアクションに可視化できるという。

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