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ヒートポンプに切り替えれば総CO2排出量は1割減る――環境エグゼクティブセミナー東京電力セッションリポート(1/2 ページ)

日本の2008年度の温室効果ガス排出量はCO2換算で13億トン。だがこのうち、100度未満の熱利用のすべてをヒートポンプに切り替えれば、1割に相当する1.3億トンのCO2を削減できるという。このようなCO2削減ポテンシャルを秘めたヒートポンプとは――。

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環境メディア

1の電気エネルギーで6の熱エネルギーを出力

 環境エグゼクティブセミナー「今改めて考える、企業のCO2対策 大企業だけの問題ではない―省エネ法、環境確保条例、排出量取引…」(主催:環境メディア編集部)の3番目のセッションは「低炭素社会づくりに貢献するヒートポンプ」。講演者は東京電力 販売営業本部 副部長の小池明男氏だ。

東京電力 販売営業本部 副部長 小池明男氏
東京電力 販売営業本部 副部長 小池明男氏

 小池氏によると、日本の温室効果ガス排出量は約13億トンCO2(2008年度速報値)。このうち電力セクターで約3割、東京電力単独でも約1割に相当する1.2億トンのCO2を排出しているという。小池氏は「電気を作る側でできるだけCO2を排出しないように対策をしていくが、電気を使う側でも省エネ化をしないとCO2排出量は減らない」としたうえで、身近な省エネ技術であるヒートポンプのCO2排出量削減効果を解説し始めた。

 小池氏は、部門別CO2排出量のうち、産業は1990年比でほぼ横ばいなのにもかかわらず、家庭・業務その他(オフィスビル等)で増加していることを示し、「これらを抑制するのが急務」と指摘。さらに、分野別のエネルギー消費内訳では、家庭用では60%、業務用では50%が熱需要(冷房+暖房+給湯)で消費されており、「ここに省エネの余地がある」と語る。

部門別CO2排出量の推移。家庭は1990年比で40%増、業務が同34%増と著しく増加している
部門別CO2排出量の推移。家庭は1990年比で40%増、業務が同34%増と著しく増加している
全エネルギー消費に占める冷房・暖房・給湯の熱需要の割合は、家庭用では60%、業務用では50%となっている
全エネルギー消費に占める冷房・暖房・給湯の熱需要の割合は、家庭用では60%、業務用では50%となっている

 熱需要の内訳をさらにブレイクダウンすると、家庭用の暖房では87%が、給湯では90%が化石燃料の燃焼で賄われている。同様に業務用では、冷房では61%、暖房では93%、給湯では96%が化石燃料の燃焼だ。

 この部分を置き換えるのが「ヒートポンプ」。ヒートポンプは熱媒体によって空気中の熱を吸収し、それを圧縮/膨張させることで空気や水を温めたり冷やしたりする熱利用方式である。例えばCOP(エネルギー消費効率)値が6のエアコンの場合は、1の電気エネルギーを投入すると6の熱エネルギーを出力できる(そのうちの5は空気中の熱エネルギー)。これを熱効率90%のガスファンヒーターと比較すると、発電・送電ロスを加えても、CO2排出量で70%、エネルギー消費量で60%を削減できる。

 現在では、1メガジュールの熱量を作るのに必要なランニングコストとCO2排出量は、最高効率のヒートポンプエアコンでは0.9円/14グラムで、石油ストーブやガスストーブに比べ、ランニングコストでは2分の1〜3分の1、CO2排出量では3分の 1〜4分の1で済むという。

 小池氏はこれらを指摘したうえで、「まだエアコンの方が不経済と思っている人が多いが、その意識を変えていくのが仕事」と語る。

100の熱エネルギーを出力するのに要する1次エネルギーと排出するCO2量。ガスファンヒーターに比べ、CO2排出量は70%、エネルギー消費量は60%少ない
100の熱エネルギーを出力するのに要する1次エネルギーと排出するCO2量。ガスファンヒーターに比べ、CO2排出量は70%、エネルギー消費量は60%少ない
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