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ヒートポンプに切り替えれば総CO2排出量は1割減る――環境エグゼクティブセミナー東京電力セッションリポート(2/2 ページ)

日本の2008年度の温室効果ガス排出量はCO2換算で13億トン。だがこのうち、100度未満の熱利用のすべてをヒートポンプに切り替えれば、1割に相当する1.3億トンのCO2を削減できるという。このようなCO2削減ポテンシャルを秘めたヒートポンプとは――。

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環境メディア
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適用分野は地域/建物冷暖房や産業分野にも拡大

 ヒートポンプが用いられているのはエアコンだけではない。冷蔵庫、給湯器、洗濯乾燥機などにも利用されており、2001年に発売されたヒートポンプ給湯器のエコキュートでは、従来の燃焼式給湯器に比べて50%以上のCO2排出量削減と80%のランニングコスト削減を実現しているという。8年間の累計出荷台数は200万台を突破した。これは、1997年12月発売のハイブリッド自動車「プリウス」が12年かけて積み上げた累積出荷台数とほぼ同じだ。

 ヒートポンプは、地域や建物の冷暖房にも用いられている。総合エネルギー効率はガス空調やコジェネレーションシステムよりも高く、熱源にも空気熱だけではなく、河川熱や下水熱、ビル排熱、地中熱などさまざまな未利用熱が利用できる。

 これまでは蒸気ボイラーで熱エネルギーを一括生産し、配管で搬送する形が一般的だった工場などの産業分野でも、ヒートポンプが活用できるようになってきている。小池氏によると、「ある大きな自動車工場で計測したデータでは、蒸気ボイラーに投入したエネルギーのうち、燃焼ロスや配管ロス、ドレンロスなどで4 分の3が消費され、有効利用されていたのは26.6%だった」という。そして「これをヒートポンプに置き換えれば、CO2排出量を半分以下に抑えることができる」と語る。

投入エネルギーのうち、燃焼ロスで25.4%、配管ロスや蒸気漏れで27%、ドレンロスで21%が失われ、有効に利用されていたのは26.6%だけだったという
投入エネルギーのうち、燃焼ロスで25.4%、配管ロスや蒸気漏れで27%、ドレンロスで21%が失われ、有効に利用されていたのは26.6%だけだったという

 ヒートポンプが日本にフルに普及したら、どれほどのCO2排出量削減効果があるのか。小池氏は「家庭用、業務用、産業用の熱需要のうち、ヒートポンプが使える100度未満の熱利用のすべてに適用すれば、日本の温室効果ガス排出量13億トンのうち、1割に相当する1.3億トンのCO2を削減できる」と語る。 CO2排出量が減れば、当然それだけ省エネも進む。

100度未満の熱利用をすべてヒートポンプに置き換えると、CO2排出量を1.3億トンを削減できる。これは日本の温室効果ガス排出量13億トン(2008年度速報値)の1割に相当する
100度未満の熱利用をすべてヒートポンプに置き換えると、CO2排出量を1.3億トンを削減できる。これは日本の温室効果ガス排出量13億トン(2008年度速報値)の1割に相当する

 1つの家庭が排出するCO2は年間約5.5トン。そのうち2トンが自家用車、3.5トンが家庭でのエネルギー消費である。しかし、5.5トンのうち「エアコンや給湯器にヒートポンプを利用すれば1トン減る。さらに、太陽光発電システムを使うと1トン、電気自動車に変更すれば1トン減る。これで家庭のCO2 排出量を半分以下に抑制できる」(小池氏)

 小池氏は、「温暖化を防ぐということは、ものを燃やすのをできるだけ少なくしていこうということだ。それを実現する一歩が空気熱を使うヒートポンプである」と語り、低炭素社会づくりにおけるヒートポンプの重要性をあらためて訴えた。

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