海外で培ったユニクロ勝利の方程式【前編】:世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(3/3 ページ)
積極的なグローバル展開によって売り上げ拡大を図るファーストリテイリング。それを支えるプロモーション戦略に迫る。
取り残される日本
ITmedia 情報、商品、店、PRという方程式は他業界でも応用できるのでしょうか。
勝部 業界というよりも企業によります。日本企業がグローバルに目を向けるに当たっては1つのパターンになると思います。
日本企業はグローバル化を積極的に推進すべきです。そもそも日本という国自体、独自の言語や風習などが根強く、いわゆる「ガラパゴス化」する危険性をはらんでいます。現実的に世界中の富が中国やインドといった新興国に次々と移動している中、日本は取り残されています。わたしがそれを強く感じたのは、ほとんどの欧米自動車メーカーが「東京モーターショー」への出展を見送ったのに、中国の「広州モーターショー」では主要メーカーが勢ぞろいしていたことです。
問題なのは、日本を取り巻くこうした現状は、風呂の湯が徐々に冷めていっているようなものなので気付きにくいことです。湯がいきなり真水に変われば誰もが気付きますが、ゆるやかに温度が下がっても分かりにくいのです。このままでは5年後にはまるで様相が変わってくるのではないでしょうか。
ITmedia 日本企業は海外に出ろということでしょうか。
勝部 基準を海外に置くべきだと思います。たとえ海外に進出せずに日本の中でビジネスを展開するとしても、基準を海外に置けば世界最高レベルのことをしているかどうかという判断がつくようになります。
実際に海外に出て行くと、まるで駄目だということを痛感します。世界各国から上がってくるキャンペーンの売り上げデータなどを見ると、日本ではヒットしているのに海外では失敗しているというのは往々にあります。失敗するのは、やはり現地に入り込めてなかったり、サービスがグローバルスタンダードでなかったりということです。悪戦苦闘の日々です。それが世界の現実なのです。
そうはいっても、文化や技術など日本にも素晴らしいものがあります。そうした部分を抽出して世界に輸出していくことで、新しい日本企業像を世界にきちんと示せるのではないかと思います。ユニクロも、パリでのプロモーションやファーストリテイリング創業60周年のキャンペーンなど、いくつか成果が出始めています。今後はより1つ1つのキャンペーンの精度を高めていきたいです。
外資参入は歓迎
ITmedia 具体的に日本の強みとは何でしょうか。
勝部 海外と比べて日本人は真面目で勤勉に働きますし、きれい好きです。日本のおもてなし、気遣いといった文化は実に素晴らしいと思います。
受容性が高いのも強みです。日本人は何でも臨機応変に受け入れ、それをかみ砕き理解する力があります。周囲の状況が変化する中で自分たちも変わっていかないといけない今こそ、そうした能力は重要なのです。
ITmedia 海外のアパレル企業が日本に相次いで進出しています。どのような印象を抱かれますか。
勝部 市場の活性化につながり好ましいです。これまで低価格帯のファッションに対して興味がなかった人たちが外資企業の参入で関心を持ち、それによってユニクロにも目を向けてもらえるようになります。
また、仮に外資と比べてユニクロにファッション性が足りないとしたら、彼らに勝たなければという意識が生まれてきます。消費者にとっても良いことだし、企業の意識変革にもつながります。
後編:「Webが世界レベルにならないと勝てない」に続く。
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