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【第1回】ヒト中心の新・クラウド戦略とはヒトの働き方を変える新・クラウド戦略(1/2 ページ)

クラウドは「ITの話題」ではなく「ヒトの話題」である。従業員の働き方、人と人とのコミュニケーションがクラウドによりどう変わっていくのか。本連載では先進事例に基づき「ヒト」の観点からクラウドのインパクトを探る。

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「どう作るか」から「どう使うか」へ

 昨年はさまざまなベンダーがクラウドコンピューティング市場に参入した1年だった。2010年はこうした「クラウド祭り」も落ち着き、企業がクラウドを本格的に活用し始める「クラウド活用元年」になる。これまでのクラウドは大規模データセンターや仮想化技術など「クラウドをどう作るか」という技術論に終始していた。今後求められているのは「クラウドをどう使うか」というユーザー側の議論である。

 ユーザー企業にとって、クラウドをどう作るかは重要ではなく、クラウド導入により社員の働き方がどう変わっていくのかが重要なのだ。多くの企業においては、さらなるビジネス成長のために社員一人一人の業務を変革することが求められている。社員が行っている業務のどの部分をクラウド化すると業務効率化や価値創造力の向上が実現できるのだろうか。

 本連載では6回にわたりクラウドをヒトの観点から議論し、新たなクラウド戦略を考えていきたい。

クラウドは万能ではない

 クラウド導入にまつわる、ある失敗例を紹介しよう。古くからコラボレーション製品「Lotus Notes」を使用している製造業A社は、運用を外部ベンダーに委託しているため年間運用費は3億円に上っていた。新規IT予算ゼロの環境の中でシステム運用費の削減がテーマとなっており、電子メールのクラウドサービスである「Google Apps」が検討された。Google Appsは1ユーザー当たりの費用が年間6000円なので、全社で導入しても2億4000万円のコストダウンとなる算段だった。

 しかし、実際にはGoogle Appsは導入されなかった。というのも、3億円という運用費を詳細に調べていくと、ネットワークやハードウェア、サーバの運用費比率は極めて小さく、コストの大半は、ユーザーサポート/ヘルプデスク、エンドユーザーコンピューティング(EUC)支援、ガバナンス対応に割かれていたからだ。

 Google Appsを採用したところで、例えば「大事なメールを消してしまったので戻してくれ」、「情報漏えいの可能性があるので過去ログを分析してくれ」といった要望に対するサービスが不要になるわけでない。結局、別のベンダーにこうしたサービスを委託するか、自社で実施する必要があり、ほとんどコストダウンにならなかったのである。

 ユーザー企業が求めているのは、単にアプリケーションが動いている状態ではない。ユーザーサポート、管理、PDCA、ガバナンスを含むトータルシステムを求めている。クラウドを活用したからといって情報システム部門が不要になるわけではなく、今後はトータルシステムを構築、提供するという重要な役割がシステム部門に期待されるのだ。

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