庚寅の年は時代のターニングポイントに:景気探検(2/2 ページ)
今年は60年に1度の「庚寅」。戦前、戦後の日本を振り返っても、庚寅の年は時代のターニングポイントになっているという。
良し悪しがはっきりする寅年
いまや年末の風物詩となった日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」は、その年の世相を表す一字として人気が高い。例年、京都・清水寺の奥の院で同寺貫主が揮毫し、マスメディアを通じて全国に報道される。2009年は12月11日に発表された。このイベントは昨年でちょうど15年目を迎えたが、振り返ると選ばれた漢字がその年々の景気の良し悪しを映しているように感じられる。
2008年は「変」だった。前FRB議長に「100年に一度の津波」と言わしめた未曾有の大不況が世界を覆い、世界の経済情勢はまさに一変してしまった。
2009年は「新」になった。新政権、新記録、新型インフルエンザなどが根拠である。上位に暗い漢字が少なかった。第2位は「薬」である。芸能人の薬物使用が大きな話題となったが、本来の意味は良い意味である。第3位は「政」であった。北拓、山一、長銀、日債銀の破たんといった金融危機が生じていた97年、98年の漢字は「倒」、「毒」であった。この時と比べると人々のマインドはだいぶ明るい。
2010年は「寅」年。寅の年は景気に関して、良いか悪いかはっきりしている傾向がある。第二次大戦後の寅年を拾うと、1950年の経済情勢は朝鮮動乱による特需が起こり、1962年は東京オリンピック前の好景気に沸いた。ところがこの後、暗転する。1974年は前年の第1次石油危機による狂乱物価で経済成長率はマイナスになった。1986年は円高不況だが11月に谷をつけた。日経平均株価は前年末比42.6%と大きく上昇した。1998年は長銀・日債銀の経営破たんと悪い面が出た。
特に2010年は、60年に1度の「庚寅(かのえとら)」。「庚」は自ら新しいものに改まっていこうとする状態を表し、「寅」は「うごく」という意。その意味するところは「新しいことが起こる」というものだろう。1890年は明治政府での「第1回 貴族院多額納税議員選挙」や第1回総選挙、1950年は戦後の自由党結成(総裁:吉田茂)など、庚寅の年は時代のターニングポイントになっている。
気になる寅年の景気はどうか。1974年の実質経済成長率は1.4%減、86年2.8%増、98年2.0%減と、減少と増加が交互である。今年の「寅」はパターン的には10年の実質経済成長率は増加の番なので、期待したいところだ。
著者プロフィール
宅森昭吉(たくもり あきよし)
「景気ウォッチャー調査研究会」委員。過去に「動向把握早期化委員会」委員、「景気動向指数の改善に関する調査研究会」委員などを歴任。著書は「ジンクスで読む日本経済」(東洋経済新報社)など。
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