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インタビュー

あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(5/7 ページ)

「わるならハイサワー♪」の博水社は、清涼飲料水を作り続けて80余年。昨年「タモリ倶楽部」に登場した3代目社長に逢ってみたい! と筆者は東京・目黒の本社を訪ねた。そこで出会ったハイサワーの未知の味とは……?

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レモンへのこだわり

 1980年代、お酒の業界では、宝酒造が、原価の安い焼酎甲類で攻勢をかけ、居酒屋で焼酎が広く取り扱われるようになった。そして訪れた「バブル経済」。大手居酒屋チェーンが続々誕生し、焼酎需要はさらに急拡大した。

 こうした時代の追い風に乗って、ハイサワーも進撃を開始する。「“ハイサワーレモン”が主力商品でしたが、弊社では当初からレモンに対してのこだわりがありました。今でこそ、『トレーサビリティ(=追跡可能性)』ということが広く言われますが、30年前から一貫して、イタリアのシチリア島の信頼すべき生産契約農家が作ったレモンの果汁だけを使っているんです。

 それも、使うのは『一番搾り』に限定してきました。“ファーストラン”というんですが、レモンから果汁を搾るときに、『え〜、まだたっぷり出るのに、もう搾るのをやめちゃうの?』と思うほどしか搾らないんです。まさに“ぜいたくな最初の一搾り”で、搾汁率はわずか30%ほどです。コストは高くつくけれども、最高に美味しいレモン果汁だけを使いたいですから!

 また搾汁方法も、皮ごと押しつぶすのが一般的なのですが、そうはせずに、果実を半分に切って中の果肉部分だけから果汁を搾汁することにこだわっているんですよ。そうすることで、果皮についている残留農薬の混入も抑えられます。これは、“他人様の口に入れるものを作るのは、ものすごく責任がある”という、創業者・田中武雄以来の家訓に基づくこだわりでもあります。

 こうして搾った“最高の一番搾りレモン果汁”に天然のレモンオイルエッセンスと、たっぷりの炭酸、そして隠し味としてほんのちょっぴりのワインを加えて作られたのが、ハイサワーなんです。

 これを持ってですね、目黒区の弊社から半径1km圏にある縄のれんやスナックなどに営業をかけていったんです。そして、お店の方の目の前で、焼酎をハイサワーで割って味見していただき、併せて、各店舗にハイサワーのポスターを張らせてもらいました。そうしたらお店のママさんたちに大好評で、クチコミで広がっていったんです」

 インターネットのなかった時代に、目黒区内の半径1km範囲内で成功したという情報が、日本各地へと飛び火していったというのは、驚くべきことだ。実際、それを裏付けるように、全国のつぶれかけた中小・零細企業が、この分野に参入してきたという。

 日本には「中小企業分野調整法」という法律が存在する。大企業と中小企業とが共存共栄を図ってゆけるよう、特定の商品分野において、大企業に配慮を求める法律だ。その対象商品としては当時、ラムネ・シャンメリー・ポリエチレン詰め清涼飲料(チューペット)・瓶詰めコーヒー牛乳・瓶詰めクリームソーダの5種類があった。ここに、焼酎割り用飲料も加えられたのである。「これでようやく、ラムネの次のものができたかな……という感じでした」

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