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インタビュー

あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(7/7 ページ)

“ハイサワー”の博水社は、創業時からレモンの品質にこだわり味を守る一方で、ノンアルコールビールなど時代に合わせた新商品も積極的に展開している。3代目社長・田中秀子さんが考える、同族企業の経営において守るべき点、変えるべき点とは?

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ハイサワーのおいしい飲み方を書いたポップを、出荷時に同封している(クリックすると拡大)

 それに比べると、一般の居酒屋さんで出てくる「〜サワー」や「〜ハイ」には、まだまだ努力や改善の余地が残されているように思えてならない。せっかく、これだけおいしく飲めるものを社会に提供しているのに、実に勿体ない話だと筆者は思う。

 「実はおっしゃる通りで、ときどきお客様から『芋焼酎をハイサワーで割ったら合わなかった』といったクレームを頂戴することがあるんです。確かにハイサワーはすっきりした味の甲類焼酎に合うのですが、芋やそばなど個性が強い焼酎で割るのはおすすめではないのです。ですから私どもでは、商品を出荷する時点で、おいしい割り方やレシピを書いたポップを入れるようにしているんですが……」

 おそらく、そこが難しいところなのだろうと思う。

 というのも、あまりに詳細に「あれをやってはダメ」「そうじゃなくてこうしろ!」といったことが書かれていれば、読んだ客は面倒になったり、ろくに読まなかったりするだろう。それはおそらく、酒屋や居酒屋などの業者でも、個人で買って帰る客も同じはずだ。かといって、あまりアバウトなポップだと、それこそメッセージがほとんど伝わらないということになりかねない。

 「メラビアンの法則」にもあるように、言語情報だけで相手に伝達できるメッセージは全体の7%に過ぎないのだから、ポップの文字だけではどうしようもない部分が残るのは、致し方ないとも言える。同社がテストマーケティングの対象にしている目黒区内のお店であれば、社員がじかにデモンストレーションすることもできるだろうが、全国となればそうもいくまい。

 すでに“全国区”のブランドとして認知され、しかも人気を博しているハイサワーが、その本来のおいしさを広く日本全国の生活者に知ってもらうことができたならば、博水社は、今までの発展をさらに上回る大きな飛躍が可能になるだろう。それができるかどうか、3代目・田中秀子社長と、同社スタッフに課せられた課題は大きい。“現場の知恵”によって、その難題をクリアしてゆく姿を見守りたいものである。

 →あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(前編)

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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