あなたの知らない“ハイサワー”の世界――博水社社長・田中秀子さん(後編):嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(6/7 ページ)
“ハイサワー”の博水社は、創業時からレモンの品質にこだわり味を守る一方で、ノンアルコールビールなど時代に合わせた新商品も積極的に展開している。3代目社長・田中秀子さんが考える、同族企業の経営において守るべき点、変えるべき点とは?
ハイサワー各種商品全般の有用性という点から見るならば、裾野はもっと広がる。お酒の弱い若者、さらには、一切飲めない若者が急増している現代。昔のように、強いお酒を宴席で無理強いされるのが嫌で、そういう場に足を向けない人も多い。
しかし、ハイサワーの各種商品は、そういう人々の味方だ。お酒が弱ければ、ハイサワーの比率を高めて、思い切り薄いお酒にすればよいし、まったく飲めない人だったら、上記のキャバクラやホストクラブの例のように、“ハイサワーハイッピー”のレモンビアテイスト、ビアテイストを飲めばよい。さらには「あわふわ」というノンアルコールビールもある。
それは、現代の健康志向にもマッチする。メタボを気にしている男性などにも、そうした飲み方の人は増えているし、“ハイサワーレモン”や“ダイエット ハイサワー”も、そのままでも甘くなくて、お勧めの大人の味だ。
お酒を割る飲料としての“ハイサワー”――普通に考えれば、お酒文化の衰退とともにハイサワーも衰退しそうなものだ。しかし博水社では、逆に、そういう時代だからこそ求められる商品ラインアップを揃え、そういう時代だからこそ求められる飲み方を提案することに成功している。しかも50年近く前に挫折した戦略を、現代の文脈に適応させて“復活”させるという形で……!
「ピンチを転じてチャンスとなす」とは誰もが口にする言葉だが、その通りにできる人など滅多にいない。しかし田中秀子社長は、この言葉を地で行っていることが痛感されるのである。
博水社の戦略課題とは?
ハイサワーを日常生活で飲んでいらっしゃる方々、そして、本稿をお読みくださった方々には、実はもうお分かりかもしれない1つの課題がここで浮かび上がってくる。それは、ハイサワー各種商品の正しい(おいしい)飲み方を、誰がどうやって広めるかという点だ。
何を隠そう私自身、今回のインタビュー時に、田中秀子社長が自ら作ってくださったお酒を飲んで本当に驚いた1人だ。取材前日に自分でもハイサワーを作って飲んでいたにもかかわらず、「なんとおいしいお酒なんだろう! ハイサワーで割ると、こんなにおいしくなるのか?」と、正直、あっけにとられたほどなのだ。
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