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【第1回】内陸部の消費ブーム――中国で戦うための心構え世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/3 ページ)

「郷に入れば郷に従え」ということわざが示すように、日本企業が中国市場で成功するためには現地を深く理解していなければならない。新連載では「日本企業が中国で戦うための心構え」をテーマに、中国の専門家である野村総合研究所の此本臣吾執行役員が中国の今を解説する。

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 中国経済は財政出動が功を奏し見事なV字回復を遂げている。特に、今般の経済危機の影響が軽微だった内陸部では、インフラ整備と都市化の進展、個人所得の向上、住宅や消費財需要の増加、そこに事業機会を求める民間からの投資流入という高度成長のサイクルが定着してきている。

 内陸部では世帯月収で5000元(約6万5000円)、沿岸部では同8000元(約10万4000円)を超えるとマイホーム取得や大型耐久消費財の新規購入が始まってくる。このような消費者を野村総合研究所(NRI)は「ネクストリッチ層」と呼んでいる。2009年で1300万台を超えた今の中国の自動車市場を支えているのは、この巨大化したネクストリッチ層である。内陸部でネクストリッチ層を対象に調査を行ったところ、実に回答者の6割がすでに自動車を保有しており、しかも、それらは2、3年以内で保有したものであると回答している。

 今回は、内陸部の消費者の実情について、NRIが2009年秋に実施した調査に基づいてご紹介したい(参考文献:「知的資産創造」2009年1月号 特集「金融危機後の中国と日本企業の戦略」)。

ネクストリッチ層の現状

 NRIは2004年から中国のネクストリッチ層の消費実態調査を行ってきた。ネクストリッチ層とは、富裕層ではないが、持家あるいは賃貸で自宅用不動産があり、自動車や薄型テレビなどの高額耐久消費財の取得も可能な、生活にゆとりを持つ世帯を意味している。

 最近では中間所得層、あるいは、中間層という表現もよく使われるが、中間層というとネクストリッチ層よりももう少し下の所得層までを含んだ概念と思われる。NRIが意図するのは、あくまで日本企業の商品やサービスのユーザーであり、そうなると中間層の上位に属する集団、富裕層の予備軍であるネクストリッチ層という方がふさわしい。

 NRIが調査を開始した2004年当時、ネクストリッチ層の世帯年収を内陸部では5万元(約65万円)程度、沿岸部では10万元(約130万円)前後と定義していた。内陸部と沿岸部では住宅価や生活必需品物価が異なるために、同じネクストリッチ層といっても年収はかなり異なるものとなるはずである。今回は、自動車ディーラーや家電量販店への大型耐久消費財の一次取得者についての事前インタビュー調査に基づき、ネクストリッチ層の世帯月収を、沿岸部では8000元〜1万5000元、内陸部では5000元〜8000元と定義した。

 つまり、内陸部でのビジネスを考えるとき、その商圏に世帯月収で5000元以上の世帯がどの程度存在しているかでマーケットとしてのポテンシャルを判断することができるわけである。以下では、このネクストリッチ層がどのような消費性向を持っているか見ていきたい。

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