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「世界のスタンダードに合わせた戦略を」――カルビー・松本会長石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(2/3 ページ)

カルビーの松本晃会長は、ビジネスマンとしてのこれまでの長いキャリアの中でいまだ負け知らず。その秘けつはどこにあるのでしょうか。経営戦略に迫ります。

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重複を避ける

 松本さんのキャリアの始まりは伊藤忠商事でした。松本さんは、この典型的な日本企業で、給料も地位も高いが権限がない人たちを多く見てきました。その経験から、人は、むしろ、簡単な理屈で動くことを察します。以下が、松本さんの経営方針でもあります。


(1)豊かさ

(2)わくわく

(3)自分の成長


 豊かさはお金であり時間です。わくわくはチャレンジ精神、そのためには、権限を委譲しないといけません。仕事を通じて成長したいと、優秀な人は考えます。カルビーでは、品質へのこだわり以外に、この人事面・組織面でもたくさんのこだわりがあるといいます。松本さんは、これを変えようとしています。こだわりはリダンダントである、つまり、重複していることが多いのです。重複はコストでしかありません。松本さんは、組織的な重複に対して、以下の方策を実施しています。


(1)簡素化

(2)透明化

(3)分権化


 カルビーの前組織は類を見ないマトリックス経営だったそうです。これを徹底的に簡素にしました。代わりに会長兼CEOの権限はゼロ、その権限のすべてを社長に渡しています。松本さんは、拒否権だけを持ち、結果責任を持っています。トップには、Commitment(約束)とAccountability(結果責任)の意識が必要、結果が駄目だったら身を引く覚悟が必要です。

 松本さんは、2010年度は以下のコミットメントをカルビーのステークホルダーに公表しています。


経営計画の達成

連結純売上1520億円

営業利益100億円

税前利益80億円

純利益45億円

成長戦略の策定と実行(イノベーション)海外戦略・新商品・ペプシコとのプロジェクト・M&A・New business

コストリダクションの徹底

Diversityの推進

社会貢献委員会の発足と活動


 松本さんは、昨今の不況にふれ、世の経営者に警鐘を鳴らします。リーマンショックがあったからという言い訳は通用しない、なぜなら、世の中はいつも変わっているわけですから、経営者としてコンティンジェンシープランを考慮していないことはありえないことなのです。その目標意識は徹底していて、完全な目標達成の100と若干の上触れである101の間しか認めていません。100やるといったら、結果を100と101の間におさめるのが方針です。110やった人を褒めるのではなく、1年先が読めないのかと叱咤します。反対に、本当は110できる人が100という計画を持って来るのはNGなのです。厳しいが訓練すればできると考えています。正確性は現場でないと分からないから、会社に一日中いる経営者は駄目で、現場主義を奨励します。

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