「世界のスタンダードに合わせた戦略を」――カルビー・松本会長:石黒不二代の「ビジネス革新のヒントをつかめ」(3/3 ページ)
カルビーの松本晃会長は、ビジネスマンとしてのこれまでの長いキャリアの中でいまだ負け知らず。その秘けつはどこにあるのでしょうか。経営戦略に迫ります。
世界のスタンダードまで落とす
カルビーは、今後、世界戦略を拡大していきます。こんな話を聞いたことがあります。産業革命前は、世界のGDP(国民総生産)の大小は人口比だった。産業革命が起こって、事態は一変しました。そして1989年のベルリンの壁の崩壊が、InternationalをGlobalizationという言葉に変えたというのが松本さんの持論です。つまり、Globalizationとは、一物一価ということです。
確かに、情報が氾濫し、人の行き来が盛んになり、同一物の価格差は世界レベルでなくなってきています。規模の経済を計れば共通コストは低くなり、低価格が実現します。世界人口は63億で日本の1億2700万人は世界の2%にしかあたらない。今後、世界人口は増え続け、少子化で8000万人になる日本人口が限りなく1%に近づく中で、日本市場だけにしがみつくのは、あらゆる企業にとって得策ではありません。
では、世界戦略はと問えば、こだわりも世界のスタンダードまで落とすというのが松本さんの答えです。カルビーが仮に現地製造をすると仮定すると、中後進国ではコストを3分の1にしないと物は売れないと考えています。
日本だけ見ると、食品業界は利益率の低い業態というのが既成概念になっていますが、海外では食品は儲かる業態です。例えば、ペプシコの税前利益は18%です。この差を、松本さんは、物事の考え方が演繹的な日本と、帰納的な海外というところに見ています。日本は良い製品、良いサービスであれば売れると考えていますが、結果は利益率が低いのです。海外では、消費者はいくらなら買ってくれるという発想です。そこから、いくら儲けるのか、製造コストをいくらにするのかといった方程式が成り立たなければ、開発計画は中止されます。会社経営は足し算と引き算しかなく、掛け算はない。どれだけ簡単にするかが大切だと松本さんは考えています。
カルビーは、変わる予感がしました。
著者プロフィール
石黒不二代(いしぐろ ふじよ)
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 兼 CEO
ブラザー工業、外資系企業を経て、スタンフォード大学にてMBA取得。シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立、日米間の技術移転などに従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、大企業を中心に、事業の本質的な課題を解決するためWebを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。日経情報ストラテジー連載コラム「石黒不二代のCIOは眠れない」など著書や寄稿多数。経済産業省 IT経営戦略会議委員に就任。
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