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日本に勝機はあるのか――日本企業が中国市場で戦うための心構え世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/3 ページ)

中国の富裕層は沿岸部のみならず内陸部でも急増しており、世界中の企業がこの市場に大攻勢をかけている。欧米や韓国などの外資企業、そして着実に力をつけている中国国内企業との競争において、日本企業は勝機を見出せるのか。

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「模倣困難」な経営システムを構築する

 商標やデザインの違法な模倣は問題外であるが、そうでなくても市場で評価が高まれば必ず類似の製品やサービスが現れる。2009年の中国の乗用車市場で29万台を売り、最多販売車種となったBYDのF3もターゲットモデルはトヨタのカローラで、車格、デザイン、テイストは徹底してカローラをベンチマークしたものである。ネクストリッチ層のユーザーからすればほぼ半値でカローラと同等(スペック上はカローラを上回る)の車が手に入るわけであるから爆発的に売れたのも当然である。

 企業の競争力には表と裏がある。製品やサービスといった顧客が接する部分を表とすると、顧客からは直接には見えないが製品やサービスを支えている組織と業務システム、それらを裏の競争力と呼ぶ。

 例えば、中国の勝ち組企業の代表格であるコマツは、自社製品にGPSを搭載し、マシンの稼働状況を日々捕捉することで、マシンの不正転売を防ぐとともに、補修パーツや保守点検サービスの商機を逃さないマーケティング手段として使っている。また、マシンの稼働率からその顧客の経営状況を推察し、顧客の信用状況を判断する道具としても活用し、それにより独資の財務公司を設立して、自社によるリース事業が展開できるようになっている。信用情報が未整備な中国では、一般的にリース事業を行うには銀行とタイアップする必要があるが、コマツはその必要がなく、その分だけ高利益率のリース事業が展開できるようになっている。

 この事例に限らず、中国市場での持続的な競争力の維持には、裏の競争力が必須であり、それが自社にとって何になるのか考え抜く必要がある。

 さて、筆者が2004年に中国のネクストリッチ層(世帯年収で5万元〜10万元)を推計したときには、沿岸部の上海市や北京市であれば総世帯の15%程度、重慶や成都のような内陸部の大都市であれば同3〜4%程度という少数派に過ぎなかった。つまり、当時の中国市場はごく一部の富裕層が求める高級品と一般大衆が求める廉価品の二極分化の状況であった。それからわずか6年で、ネクストリッチ層は想定以上のスピードで増加し、巨大な消費市場を形成するに至っている。

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