この時代、経営者の腕の見せどころ:伴大作「フクロウのまなざし」(2/2 ページ)
経営者と話をしていると不景気を嘆く声をよく聞く。しかし、嘆くだけではどうしようもない。今起きているさまざまな事象の本質を見極め、根本的な対処方法を考える必要があるのだ。
生き残るためには
日本企業は今まで、国内を中心に製品のマーケティングを行ってきた。自動車であれ、家電であれ、コンピュータなどの業界でもこの傾向はほぼ一貫している。いわゆる「ガラパゴス市場化」と呼ばれている主因だ。
従って、日本のベンダーは世界市場でどのような製品が売れているかについて驚くほど鈍感だ。しかも、日本市場は歴史的に大手企業ユーザー中心に「ものづくり」を行ってきた。それは、少数の偏ったニーズが製品に反映され、時として一般大衆のニーズを無視する傾向となって現れた。その結果、生産量は概して少量ロットに陥りやすい。一歩眼を海外に転じると、この傾向は大きな欠格となる。日本企業を経営する貴方に課せられた使命はここにある。
前述のSamsungがそうであったように、海外の主要なメーカーは最大公約数的なニーズを把握し、大胆な数量の生産を行うのが今では常識となっている。どんな産業であれ、大量に注文を出せば原価は安くなる。製造業で特にこの傾向は顕著だ。自動車であれ、家電であれ、この傾向は変わらない。
つまり、大量に生産し、世界中で販売できるチャネルを構築できるかが、日本企業が今後も世界市場で生き残るための鍵となっている。
求められるトップマネジメントの決断
生き残りのためなら、例えライバル企業といえども、開発であれ、部品の調達であれ、何らかの形で手を結ぶなどということが必要になってくる。しかし、これは誰もができる決断ではない。もし中途半端に終わったら、そこへ投じた人的資源あるいは資金が泡となって消えてしまう。そのためには経営者の揺らぐことがない固い決断が重要なのだ。
恐らく、それを進める中で、企業経営の根幹にかかわるICT基盤を共同利用するなどというのも出てくるだろう。部品の共通化、調達のグローバル化、先進技術の共同利用を進めようとすると、否応なしに共同利用に進まざるを得ないのは明らかだ。これは、時代の流れなのだ。
逆に、これに参加しないことを決断したとしよう。電気自動車に必要なさまざまな技術要素が盛り込まれた安価で高品質の部品の入手から遠ざけられ、各国の厳しくなる規制に対応できず、どの市場からも退けられる。グローバルなサプライ・デマンドチェーンから外されてしまう。その結果、自ら滅亡の道を歩むことになる。
仮に、自らのブランドを守ることを優先して自主独立の道を歩もうとしても、ライバルが、新しい仕組みに参加していた場合、技術・コスト面でかなり厳しい立場に置かれ、苦戦を強いられることは間違いない。
一方、企業がこのような仕組みに参加することを考えたとして、それに異議を挟む動きが起きるのも当然だ。その人たちが誰かも容易に想定できる。自らの存在が危うくなる情報システム部門にいる人たちはもとより、「グローバル調達=リストラ」と考える労働組合、標準化により設計の選択肢が減少すると考える開発関係者、それに加え、社員やOBの心理的な反発などは決断を鈍らせる最大の要因に成るかもしれない。
しかし、世界が大きく変化している現状を正確に認識しているなら、あなたの決断は揺るがないはずだ。なぜなら、決断が自社の生き残りにつながっているからだ。
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