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IT業界に構造変化 「第2の繊維産業化」のおそれも戦略コンサルタントの視点(3/3 ページ)

前回、5年から10年で国内IT産業の雇用の約3割が消失するという仮説について述べました。今回は、ベンダーの特徴別に、このことの影響と対応の方向性について考えることにします。

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自己変革が求められるユーザー系の情報システム子会社

 以前も触れたように、親会社としては、情報システム子会社を変革するか、売却するかいずれかの選択肢を迫られてきます。

 情報システム子会社は、本体とは異なるコスト構造を持ち込み、低コストオペレーションを実現するために設立されましたが、この存在意義が揺らいでいます。これからは、親会社の業務の効率化や(新サービス企画など)売り上げへの貢献を果たす存在へと自己変革することが求められます。

今後IT業界の方向性

 先ほどの繊維業界と同様に、電気機械器具製造業の従業者は1990年代にピークを迎えた後は、6〜7割程度にまで減少したことを考えてみれば、国内ITベンダーの従業者が同様の軌跡をたどることがないとはいえません。

 国内IT市場の大きな成長が望めない中、業界再編やグローバル化は不可欠でありますが、日本が強みを持つ製造技術やサービスや安全の品質と、IT技術を「掛け合わせた」新しい商品・サービスによるビジネス確立に向けた取り組みが必要となるでしょう。

 5年後にはITベンダーとしてシステム構築やシステムサービスを売るのではなく、輸送・物流、発電・送電・水管理などのユーティリティ、商業製造用建造物の運営、通信販売行などをビジネスの中心に据え、その上で保有するIT資源を競合に対する競争優位創出の源泉とした「企業」が大きく成長しているかもしれません。可能性はまだまだありそうです。

注:1)「日本の繊維産業 なぜ、これほど弱くなってしまったのか」伊丹敬之+伊丹研究室

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著者プロフィール:大久保 達真(おおくぼ たつま) プロジェクト マネージャー 株式会社ローランド・ベルガー

大久保 達真

慶応義塾大学理工学研究科修了後、三菱マテリアル、ネットワンシステムズを経て現職。米国コロンビア大学MBA。情報通信業、電機、自動車、金融、航空業界など幅広い業界における、事業戦略、新規事業立案、組織・人材戦略、マーケティング戦略、IT戦略の立案とともに、大規模PMOの運営などの実行支援も手がけている。システムアナリスト、システム監査技術者の資格を保有という一面を有する。


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