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人が育つ企業に共通する上司像とは?ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

人を尊重する会社は業績も向上する。部下に愛情を注ぎ、仕事へのチャレンジを喜びとする魅力的な上司になろう。

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 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。


上司を取り巻く環境は20年前とはまったく別物

 部下を育て活かす「上司力」というコンセプトを、『上司力トレーニング』(ダイヤモンド社 2006年)で世に問うてから、4年がたとうとしている。この間、さまざまな業界、規模の企業にて管理職の方々のトレーニングをするなかで、強く感じていることがある。そもそも初めて部下を持ち、上司として組織を引っ張る立場となると、多少なりとも不安を持つものである。しかし、その不安は、バブル崩壊以前の上司たちが抱いていたものとは質が異なってきている。


『部下を育て、組織を活かす、はじめての上司道』

 かつての日本企業では、社員は会社の成長と自分の将来に期待を持って働くことができた。職場にいるのは、会社への帰属意識を持つ男性の正社員がほとんどで、家族的なつながりが生まれるのは自然なことであり、組織人としての自覚も強かったはずだ。ところが近年、上司と部下を取り巻く環境は大きく変化し、それに伴いさまざまな課題が顕在化している。

 バブル崩壊後の20年、インターネットによる情報伝達の進化やグローバル化の波にのみ込まれた企業は短期業績を追い求め、個人の成果を重視してきた。その結果、日本企業が本来持っていた「組織のチームワークによって個人では成しえない大きな成果をあげる」という仕組みが機能しにくくなってしまった。

 一方、かつての日本企業を知らない若手や中堅社員は、会社に不信感を抱き、将来に漠とした不安を抱え、自己保身に走る人も少なくない。それでも、組織の中で上司との絆を断ち切ると仕事の手ごたえや成長を実感することは難しいため『勉強会に1万円払うなら、上司と3回飲みなさい』(光文社 2010年)で諭したが、素直に受け入れることができた若手は限られた。「既得権益を享受する大人が何をいまさら」といった声なき声すら感じた。切ない現実である。長らく社会から愛情を注がれず、会社からも「自立せよ」と言われ続けたのだから当然なのかもしれない。

 また、雇用形態の多様化が進み、職場では正社員と並んで派遣社員や契約社員が仕事をしている。働き方も価値観もさまざまな人たちが一緒に働くのだから、区別や差別が広がりコミュニケーションのハードルは上がる一方である。さらに言えば、年功序列が崩れ、バブル入社組が昇格の時期を迎えるも、ポストは限られているため、「年上の部下」を持って対応に苦慮する管理職も少なくない。弊社では、働く人同士の絆が断たれていく現実に強い危機感を覚えており、三菱総合研究所・主任研究員の松田智生氏、中央大学大学院・兼任講師の戸山孝氏、プライスウォーターハウスクーパース・コンサルタントの堀越由紀氏、アルプス電気・人事部部長の松山慎二氏らとともに、これからの組織のあり方を議論する公開シンポジウム『脱!無縁職場―ひとりランチ社員が増えていませんか?―』を7月28日(水)に東京国際フォーラムで開く。

 しかもこの国は、かつてどの先進国も経験したことのないほど急速な少子高齢化時代に突入した。若さにあふれ、伸び盛りの新興国企業と伍して競わなければならないのにである。企業は女性も中高年も高齢者も含め総力戦で組織を作らざるを得なくなっている。その現場最前線にある、これからの上司が立ち向かう状況は、20年前に上司を取り巻いていた状況とはまったく別物である。マネジメントの難易度の高さは、おそらく比べ物にならないだろう。

 何事も、行き過ぎれば振り子のように揺り戻しがくるもの。すでに個人偏重の短期成果主義の弊害に気づき、チームビルディングやコミュニケーション活性化の必要性に目を向けている企業もある。若手や女性の活躍支援の相談をいただく企業も増えている。とはいえ、20年かけてゆがんできた組織のありようがすぐに軌道修正されるわけでもない。言葉を選ばずに言えば、「過去の経営層がためてしまった組織の歪みや修正を、現代の現場の上司が担わされている」のが現状ではないだろうか。

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