システム・コーチングとは?:ベストチームとは何か(2/2 ページ)
コーチングというとどのようなイメージを思い浮かべるだろうか。コーチとクライアントが1対1で対話をしている場面を想像する方が多いのではないだろうか。
さらに次の段階として、そのチームの持つ課題の解決やそれに向けての取り組みについてメンバーがコミットし、具体的に行動して変化を起こしていく際には、この自覚的で意図的な関係性が力強い土壌となることは言うまでもない。チームとは共通の目的を持ち、その目的に沿った何らかの結果を出すために存在する。そのチームが目指す結果を出し続けるためにも、自覚的で意図的な関係性を作り続けていくことが求められる。その際に、こうした関係性が土壌となって持続的な行動を育み、その行動からチームが望む結果、つまり花や果実が生まれるという好循環の創出をシステム・コーチングは目指しているとも言えよう。
システム・コーチングをさらに理解していただく上で、もう1つ付け加えたいことは、こうした一連のプロセスをサポートするわたしたちシステム・コーチの役割は、決してそれぞれのシステムを修理したり治療したりするものではない、という点である。システムコーチの役割は、「システムの姿が自ら明らかになるよう支援する」という、いたってシンプルなものなのだ。
つまり、先に触れた通り、システムを構成する個々のメンバーが、自分たちが所属しているチームの現在の状態について自覚的になりさえすれば、システムは自律的にその本来の姿を明らかにしようと機能し始めるので、システム・コーチの役割は、その本来の姿を励ましながら、好循環の創出とその後の変革の側面的な支援をする。その意味では、システム・コーチングは外科手術というよりは、システムが持つ潜在的な力の発露を促す漢方薬のようなものと理解いただきたい。
さて、システム・コーチングについてどれほどご理解いただけただろうか? もし「システム・コーチングって何だろう?」と好奇心を開いていただけたのであれば、今回はまずは大成功といえよう。次回は、より具体的な事例を使いながら、システム・コーチングがどのように組織におけるチームワークを醸成していくかを、読者の皆さんと一緒に見ていきたい。
(注)
ORSCとは、Organization & Relationship Systems Coachingの略称です。ORSCの最大の特徴は、複数名となるクライアントを1つのシステムと捉え、そのシステムそのものをコーチングの対象とすることです。ここでシステムとは、2人以上の人間によって成り立つ関係性すべてを想定しており、具体的には、企業や組織、チーム、上司と部下などといった関係性から、家族や夫婦、親子などの、より身近な人間関係のことを総称しています。ORSCは、Marita FridjhonとFaith Fullerによって開発され、現在は両者によって設立されたCRR(米国カリフォルニア州バレーホに本拠を置くThe Center for Right Relationship)という組織によって、既に世界の20カ国で提供されています。日本ではCRRジャパン(ウエイクアップによって設立されたCTIジャパンの兄弟会社)を通じて提供されています。
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著者プロフィール:島村 剛(しまむら たけし)
筑波大学第一学群社会学類卒業。住友銀行より日本総合研究所に転じ、同社研究企画部長を経て2004年CTIジャパン代表に就任。その後2008年に(株)ウエイクアップ、2009年にCRRジャパンを設立。個人と組織の本領発揮を促し、「世のため人のために活躍する人材」の志と絆を育むべく活動中。共著書に「コーチングのプロが教えるリーダーの対話力 ベストアンサー」がある。CTI認定資格CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)CRR認定資格ORSCC(Organization & Relationship Systems Certified Coach)
著者プロフィール:森川 有理(もりかわ ゆり)
国際基督教大学教養学部卒業後、カリフォルニア大学サンタバーバラ校にてアジア太平洋研究修士課程修了。三和総合研究所(現 東京三菱UFJリサーチ&コンサルティング)国際本部研究員、リクルート、HCソリューション部、シニアコンサルタントを経て独立。現在、グローバルセンセーション代表 組織におけるチームビルディングや風土改革、夫婦や家族の関係性の強化、また個人の夢の実現など、コーチングを通じて、社会の中における個人が互いに認め合い、成長し合う関係性を支援している。CTIジャパンのリーダーとして、コーアクティブ・コーチングを伝えるとともに、システム・コーチ養成機関であるCRRのグローバル・ファカルティでもある。「コーチング・バイブル」(東洋経済)共訳。
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