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大手コンピュータ3社のクラウド戦略伴大作「フクロウのまなざし」(3/3 ページ)

経営に携わる方も、唐突に出てきたようにも見える「クラウド」について、知識を持つことが重要と考える。

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クラウドコンピューティングは諸刃の剣

 今回のインタビューとは別に4月14日、富士通のクラウドコンピューティングに関する発表会があった折に、執行役員常務である山中明氏に、クラウド導入のメリット、デメリットを単刀直入に伺った。

 山中氏との話を要約すると次のようになる。

、まず、ユーザー側は従来型の手組みをベースにしたシステム開発から開放され、また、運用の面でも手が掛からなくなるというメリットを享受できるということだ。当然ながら、情シス部門のコスト低減につながる。一方、現在のサービスがPaaS、IaaSのレベルにとどまっているので、業務処理という前提では、やはりそれに対応したパッケージを導入するなり、プログラムを構築するなどの必要性は残る。

 一方、ベンダー側は、従来から販売してきたメインフレーム中心のビジネスからの脱却が求められる。さらにクラウドで用いられるプラットフォームは極論すれば、いずこのベンダーの製品でもいいため、徹底的なコスト削減が求められる。また、クラウドの安定的な稼働を担保するためのハードウェア、ミドルウェアの品質とサポート体制が求められる。

 これが本当だとすれば、ビジネス面で大きなデメリットを受けることになる。ただし、前記したようにクラウドへの移行はそんなに簡単な話ではない。ユーザーは数年という時間を掛けて取り組むだろうから、その間、移行による時間的な余裕、新システム構築にベンダーが関与できること、さらに、従来は手をつけていなかったグローバルな展開とか、Web2.0など、さまざまな用途にクラウドを対応させることができる点で、ベンダーにも大きなメリットがあると理解している。これが山中氏の考えだ。

 これまで、コンピュータは企業ユーザーにとって、一種神聖で触ってはならない聖域というイメージがあった。それが、極論すれば、クラウドを導入することより、エンドユーザーは自ら求めるシステムを誰からの干渉もなく、何の制限もなく簡単に構築し、改良し、必要がなくなった時点で、廃棄することさえできるようになった。

 つまり、ある意味で、先ほど記した聖域の消滅を意味する。これまで、どんなシステムを構築するか議論を重ね、システムを設計し、実際のプログラムを組み、テスト運転を重ね、本稼働に移行するというシステム構築のプロセス全般が見直されることとなる。その中で主要な役割を果たした情報システム部門の存在意義が問われるのは間違いない。

 また、自在のシステムが構築できるようになった場合、これまで、曲がりなりにも企業データのセキュリティ管理とかコーポレートガバナンスで情報システム部門が果たしてきた役割を、どの部門の誰が代替して果たすのかは重要な経営上の判断事項だ。

 さて、経営に携わっている貴方はこのような状況が進行する中でどのような判断を下すのだろうか。

 最後に、今回のインタビューで最も遅れていると指摘したNECだが、OMCS事業本部東健二本部長氏にどのような展望を持っているかを質問した。

 「既存のNECユーザーを中心にしていない。どちらかというと、非NECユーザーが中心だ、しかも、できるだけ判断を下すことができるような層の人を想定している。クラウドの話をして脈がなさそうなら、すぐに次に切り替えるようにしている。というのも、これは経営者として感性の問題だからだ」

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