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ビジネスによってITガバナンスはどう変化するか(1)Gartner Column(2/2 ページ)

事業の方向性の相違によりITガバナンスがどのように変化するのかについて、3回に分けてご説明します。

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シナジー志向の企業は、全社的なスタイル、プロセス、および執行役員会を重視

 事業部間でシナジーを生み出すことに注力している企業は、可能な限り全社的なアプローチを採用しています。こうした企業では、統合を推進し、全事業部における類似領域に注目して共通のプロセスを導入しています。また、特にデスクトップ環境、電子メール、ITセキュリティ、ERPなどの全社的なアプリケーションをはじめとするITインフラの要素において、トップダウンで標準準拠を浸透させています。

 MITSloanとGartnerEXPの共同調査は、高いITガバナンス成果を上げているシナジー志向の企業における他より効果的なガバナンススタイルを見出しています。例えば、IT基本原則やIT投資/優先順位決定の領域では、多くの場合、二頭制または連邦制のスタイルによって事業部門のトップレベルの関与を実現しています。また、ITインフラストラクチャやITアーキテクチャに関する意思決定においては、ハイレベルのビジネス・エグゼクティブの関与がITに関するトップダウンの基盤となっています。

 シナジー志向の企業は、統合を重視するため、全社的なスタイルを必要とします。全社的な意思決定プロセスや優先順位が明確であるほど、統合は促進されます。エグゼクティブが関与してトップ主導のITガバナンスを確立し、ハイレベルのリレーションシップマネジャーの働きによってIT部門と各事業部を結び付けます。シナジーは、IT/ビジネス・リレーションシップ・マネジャーの働きによっても高められるということなのです。CIO直轄のこの役割は、IT部門と事業部門間の良好なリレーションシップの構築を目標として、事業部門に対しても一定の責任を担っています。

 シナジー志向の企業は、ビジネス・ガバナンスのスタイルおよびメカニズムとITガバナンスのスタイルおよびメカニズムが連動するように設定することで、「1つの企業」としての強みを発揮させています。

 これを実現するために重要なのは「トップレベル」です。ビジネスの方向性を設定する事業部門のリーダーが、主要なIT意思決定委員会にも出席します。IT部門と事業部門のリレーションシップはハイレベルで構築し、2者間の一体化を図ります。そして、ITガバナンスに関する伝達は、通常トップを、多くの場合、IT委員会のメンバーであるビジネス・エグゼクティブを起点としています。

シナジーを高めるために推奨されるアクション

  • 事業部門とIT部門のトップによる共同の意思決定メカニズムにフォーカスする
  • 執行委員会(社内取締役会)のメンバーがトップレベルの委員会にも出席するという、重複したメンバーシップを確保する
  • IT/ビジネス・リレーションシップ
  • マネジャーをハイレベルで確保し、各事業部のエグゼクティブとの効果的な連携を可能にする。事業部CIOにこのリレーションシップ
  • マネジャーの役割を任せることを検討する
  • シナジー、共有、再活用の機会を常に調査する(さらに、これらに対して報奨を与える)
  • 共通のプロセス、コンポーネント、アーキテクチャについての教育を事業部との連携によって全事業部要員に提供する。特に、標準準拠によって両部門でいかに意思決定プロセスの合理化が促進されるかについて強調する。

 図3は、シナジー志向の企業での実際のITガバナンスマトリクスです。ガバナンス・メカニズムにおいて、可能な限り全社的な一体化を目指そうとしているのがわかります。また、リレーションシップマネジャーもメカニズムの一つに組み込まれています。


図3

著者プロフィール:小西一有 ガートナー エグゼクティブ プログラム (EXP)エグゼクティブ パートナー

小西一有

2006年にガートナー ジャパン入社。それ以前は企業のシステム企画部門で情報システム戦略の企画立案、予算策定、プロジェクト・マネジメントを担当。大規模なシステム投資に端を発する業務改革プロジェクトにマネジメントの一員として参画した。ガートナーでは、CIO向けのメンバーシップ事業「エグゼクティブ・プログラム(EXP)」の日本の責任者を務める。


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