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【第4回】経営者がクラウドを活用する条件――クラウド活用力がビジネス価値創出力に直結する変革期をリードするIT経営者(1/3 ページ)

クラウドコンピューティング導入について、経営者の判断が求められるようなケースは少ないというのが2〜3年前の状況だったが、少し変化が生じてきている。

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見直されるクラウドコンピューティングのビジネス価値

 2007年ごろから情報システムの「所有」から「利用」へというコンセプトで登場したクラウドコンピューティングは、当初IT費用削減の切り札として期待され、一般的にIT総費用の70%を占めると言われる既存システムの維持運用費用を削減に焦点が当たっていました。

 しかし、実際には部門別に導入して、企業によっては数百台から数千台規模に達しているサーバ機器の統合および仮想化やデータセンターの共同化、サービスレベルの見直しによる保守・運用費削減など、情報システム部門長の管理下での取り組みが多くを占め、経営者の判断が求められるようなケースは少ないというのが2〜3年前の状況でした。このため、クラウドコンピューティングという言葉もITコスト削減のための手段の1つに過ぎないと認識され、経営者にはそのビジネス価値に対する認識がほとんど浸透しませんでした。

 しかし、リーマンショック以降、一時停滞していたIT投資が、昨年後半ごろから新興国市場へのビジネス拡大やグローバル最適化、あるいはビジネスモデルの変革・創出を目的として投資を増やす企業が多くなってきています。しかし、従来の年単位の期間と数十億単位の費用をかける投資ではなく、数カ月、数千万円といった桁違いに短期間・少ない金額で機動的に行うことが求められています。それを実現する手立てとして、ネットワーク経由で莫大な処理能力の提供を素早く、安価に受けられるクラウドコンピューティングが改めて注目されています。


図1.加速度的に増大するIT機器とデータ量 出所:IBM

 インターネットに接続されるIT機器は飛躍的に増加し、2011年には1兆個に達する(図1)と予測されており、かつそれらの機器の処理能力は現在でも15%程度しか使われていないという試算もあります。その無尽蔵とも言える処理能力と多様な機能をいかに上手く活用するかが、ビジネス戦略上重要になってきています。

 そのため経営者は自社運用と比較したクラウドコンピューティングの特性(表1)を深く理解した上で、そのメリットを生かしながらリスクをコントロールする判断が求められるようになります。


表1.自社運用と比較したクラウドコンピューティングの特性

クラウドコンピューティングの利用価値が高い業務領域と事例

 クラウドコンピューティングの特徴はスケールメリットが生かせる汎用性の高い業務機能や処理能力がネットワークを通じて、いつでも、どこでも利用でき、初期投資が少なく、利用した分だけの費用で済むことから、スピードと柔軟性が求められる業務においてその価値が高いと言えます。

 そのような特徴をもつ業務としては、社内および社外とのコミュニケーションやコラボレーションや、事前に投資対効果の想定が困難で試行錯誤が必要なビジネスモデルの実験、突発的に莫大な処理能力やデータボリュームが必要な研究開発業務を挙げることができます。このような業務ではIT資源の手当のための時間と費用の制約から解放されることで、知的生産性を劇的に向上させることが期待できます。(図2参照)

 一方で、既存の基幹業務処理については、クラウド環境への移行後の運用コストの大幅削減が期待できるものの、移行のためのコストやセキュリティー、信頼性のレベルを担保するためのコストやリスクを勘案すると、トータルで見た時にメリットがあるとは限らない、特にミッションクリティカルな業務への適用はメリットよりデメリットが大きくなる可能性が高いと言えます。


図2.クラウドコンピューティングの利用価値が高い業務領域

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