「社内ITナビゲーター」――情シスへの新たな期待:クラウドで変える戦略IT投資(3)(2/2 ページ)
クラウドコンピューティングで企業の戦略はどのように変わるのか。 「戦略IT投資」「社内ITナビゲーター」「IT業界の観点」などの視点から話してもらう。
これを契機にシステム部門は社内ITナビゲーターに転身すべき
ユーザーからの要請に基づいてただ言われたことをやる人、ではなく、ITに関するいくばくかの専門性を武器に、付加価値提案を行う、そのために、社外にリーチして新しいITやITの使い方を社内に持ち込む、という、外向きの動きができる組織に、システム部門も変化していくべきではないか。
少しものの見方は変わるかもしれないが、社内ITナビゲーター機能といっても、実際は、システム部門がユーザー及び経営の立場で最適なITの構築を支援する、というコアは変わらない。また、企業システムの全てがクラウドで取って代わられるわけでもない。とは言いながらも、自らのポジショニングに悩みを抱えるシステム部門にとっては、立ち位置を転換し、経営層とユーザー部門の認識を改めさせるチャンスと捉えるべきである。
社内ITナビゲーターを目指して
このような経営の視点を持つシステム部門、ユーザーの視点を持つシステム部門の姿を実現するためには、組織作りや人づくりも変える必要がある。組織作りの面では、全社最適を実現できるよう経営企画やユーザー部門とシステム部門が一体となった混成組織を構成することが有効となる。また、スキル・モチベーションのために人事制度の手当ても必要だろう。スキル育成のためには、作り手ではなく使い手の立場を理解するために経営企画やユーザー部門との人事ローテーションも有効である。
さらには正しい前向きなモチベーションを与えるために、システムがとまることを恐れるがゆえの減点主義から、積極的な付加価値提案を高く評価する加点主義へシフトする必要がある。
ユーザー部門も例外ではない
多くの日本企業においては、現場のミドルマネージャーが実質的に組織を動かしている。従来の業務のあり方を生かすために、それに合うシステム要件を提示し続けてきたのは彼らである。クラウドを活用して戦略的ITポートフォリオを実現できるかどうかも、ユーザー部門がこれまでのやり方と決別出来るかどうか、に依存する。
これまでのユーザー部門は、要件を積極的に定義せず曖昧に放置しながら、進捗に応じて具体化しなければ困るシステム構築側のアクションを待っていた。必要に迫られたシステム構築側が、要件を決めさせるべく、松竹梅の選択肢をユーザーにご提言する。ユーザーは与えられた選択肢の中から現状の業務を極力変えないですむものを選べばよかった。しかし、これからはそうはいかない。
選ぶべきサービスがレディーメイドで複数準備される。その選択肢を前にして、ユーザーは、要件を自ら積極的にかつ短期間で、定義することを迫られる。システムを業務にあわせるのではなく、業務をシステムにあわせることが求められる。パッケージ導入においても多くのカスタマイズを行ってきた企業のユーザー部門にとっては、実に大きな転換である。この成否が、全社IT投資最適化の鍵となる。
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著者プロフィール:遠山 浩二(とおやま・こうじ) A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
東京大学法学部卒。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、A.T. カーニー入社。IT戦略、IT組織戦略、ITアウトソーシング戦略、ITプロジェクト監査、など、企業のITマネジメントに関わるコンサルティングを金融機関を中心に行う一方、ITベンダーに対する事業戦略・成長戦略・営業支援も手掛ける。ベンダー・ユーザー両面からITの課題解決にアプローチしている
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